Japan REITセミナー 講師:川口有一郎氏
さらに、川口氏が語る今後の「キャップレートの市場動向」についても非常に興味深いものでした。アベノミクス前後で不動産市場に何が起こったのか、これから何が起こるのかという観点からお話しされました。2012年12月から2015年6月のアベノミクス前後期間の予想キャップレートの累積度数の分布を分析すると、年々アベノミクスへの期待値が高まり予想キャップレートがどんどん下がっています。
では、一体なぜキャップレートが下がったのかをより細かく見ていきます。キャップレートとは、リスクプレミアムと金利、家賃の期待成長率の3つから成り立っています。通常キャップレートが下がるのはリスクプレミアムが下がるからですが、アベノミクスにおいては金利が下がり続けているため、キャップレートが下がりました。家賃の期待成長率は低迷しリスクプレミアムも変わらない中、金利のみで下がったと言える今の状況は決して良い状況ではないと川口氏は言います。理由は、アメリカの金利引き上げによって日本の金利も上がり、ひいてはキャップレートがまた上がってしまうだろうと予想されることです。金利を原因とするのではなく、家賃の期待成長率の上昇を原因としてキャップレートが上がることが日本にとって望ましい状態だと川口氏は主張します。
では、今後のキャップレート予想はどうなっているのでしょうか。今年6月時点での2015年12月の予想キャップレートは、ほぼリーマンショックの直前のピークに近づいています。しかし、下がるのもここまでが限界ではないかという見方が大勢であるようです。つまり、都心部のキャップレートは今年の秋から来年中頃までに下限に達するだろうというものです。それ以後も下がり続けるという見方は少ないと言えそうです。
総括すると、不動産市場についても金利についても密接に関係しているアメリカの大きな政策転換と、消費税増税に絡む今後の日銀の政策は、日本経済にとって大きな分岐点になるであろうと、川口氏も予測困難な現状ながらも大きく注目しているようでした。講演後の質疑応答では東京オフィスの賃料の今後の動向や、フリッパーズ(短期売買)は今後減るのかどうか等、近い将来の不動産市場の動向に関する質問が集中しており、参加者がもっとも気にしている部分が顕著に表れていました。いずれにしても日銀とアメリカの対応の影響が大であることは確実であり、その2つの動きに鋭くアンテナを張っていることが必要とされそうです。
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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