ティモシー・F・ガイトナー (著) 伏見 威蕃(訳)
世界を凍りつかせたリーマン・ショックから10年、これまで篠原尚之氏とヘンリー・ポールソン氏という当時の財務官や米国財務長官という要職にあって危機の打開に奔走した人物の回顧録を取り上げてきましたが、最後に取り上げるのはティモシー・ガイトナー氏の回顧録です。
ガイトナー氏は、米国財務省に勤める官僚としてメキシコ通貨危機やアジア経済危機、ロシア経済危機やLTCM破綻危機といった有事を目撃し、或いはそれと切り結んでキャリアを積んでいきます。
その後、シンクタンク外交問題評議会やIMFに転じた同氏は、その手腕を評価されてニューヨーク連邦準備銀行総裁に就任し、そこで「100年に1度」とも評された未曽有の金融危機「リーマン・ショック」に直面します。
当初は共和党ブッシュ(息子)政権のポールソン財務長官と組んで危機対応に臨んでいたガイトナー氏ですが、続く民主党オバマ政権では自身が財務長官となって危機対応の先頭に立つことになります。
ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズという世界的にも有名な大手投資銀行が破綻し、世界が破滅の予感に慄く中、ガイトナー氏は「大恐慌」の再来を防ぐために様々な手段を駆使していきます。
その過程で生じる共和党と民主党の熾烈な党派抗争、そしてウォール街に対する一般世論の激しい敵意に同氏とそのチームが翻弄され、悪戦苦闘するくだりは手に汗握る迫力とスリルに満ちた世界に読者を誘ってくれることでしょう。
最終的にガイトナー氏とそのチームが実行した諸々の対症療法、そして「ストレス・テスト」が功を奏して凍てついた金融市場は機能を回復し、再び実体経済にも必要な資金が回りはじめます。同氏は世界を破滅から救うことに成功したわけです。
もっとも、文中で短いながらも度々触れられている中西部の工業地帯が被った経済的打撃はその後も完全には癒されることなく、その痛みはやがてかの国に異形の大統領を誕生させるうねりに変わっていくのですが・・・・。
閑話休題、一時は破滅の土俵際まで追い込まれた世界は、10年の時を経て今や「適温経済」「ゴルディロックス」と評される穏やかな好況を謳歌するに至っています。
ですが、春の宴もいつかは厳しい冬に転じます。その変化の潮目を見逃さないためにも、リーマン・ショックの始まりから終わりまで危機の最前線で力戦し続けたガイトナー氏の回顧録から学ぶことは多いのではないでしょうか。
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