2018年12月期(第5期)決算説明資料
今回取り上げるのは、2019年2月21日に開示されたCREロジスティクスファンド投資法人の第5期(2018年12月期)決算説明会資料です。
同投資法人は、物流施設の開発・運営を手掛ける株式会社シーアールイー(以下、CRE)をスポンサーとする物流施設特化型J-REITです。
東証に上場したのは2018年2月7日ですが、それに先立って2016年7月27日から非上場の状態で運用を開始していたため、期数はそれを反映した数字となっています。
同投資法人のポートフォリオは、2019年1月末時点で資産規模が約477億円、インターチェンジから5km圏内にある公共交通機関からのアクセスにも優れた好立地の物流施設7件で構成されています。
賃料構成は固定賃料100%で平均賃貸借残存期間も7.1年と長く、収益面での安定性が光ります。
そんな同投資法人の第5期決算説明会資料で注目されるのが、「中期的な外部成長目標」です。
第4期の決算説明会資料では「上場から2~3年後に資産規模1,000億円」(※1)という目標を掲げていた同投資法人ですが、第5期決算説明会資料では「中期目標である資産規模1,000億円は早期達成にはこだわらず、投資主価値向上を伴いながら実施する」という記述に変更され、外部成長見通しをトーンダウンさせる形となりました。
この背景には何があるのでしょうか。
上述の通り同投資法人の資産規模(取得価格ベース)は約477億円なので、上場後3年にあたる2021年に資産規模1,000億円を実現しようとすると、残り2年で約530億円、1期(半年)当たりでは130億円超の物件取得を行うが必要があります。
一方でスポンサーであるCREのパイプラインを確認すると、2018年10月末時点で約60億円の販売用不動産と約65億円の仕掛販売用不動産を連結貸借対照表に計上しています(※2)。
連結貸借対照表計上額のままでCREが物件を同投資法人に売却するわけではありませんが、2021年に資産規模1,000億円を実現するために必要となる物件取得ペースには物足りない印象が拭えません。
また、同投資法人が外部成長見通しをトーンダウンさせたもう一つの理由として考えられるのが、資金調達余力です。
まず借入の面から見ると、同投資法人はLTV上限を原則50%と設定し、第5期の簿価ベースLTVは47.7%、鑑定評価ベースLTVでは44.8%となっています。
これを借入余力額に引き直すと、簿価ベースよる場合は15億円(※3)、鑑定評価べースによる場合は28億円弱(※4)となりますが、前述の資産規模目標達成に必要な外部成長ペースに比べると限定的な金額規模です。
続いて増資による資金調達ですが、こちらも現時点では逆風が吹いている状態です。
というのも、以下に示すように同投資法人の投資口価格が昨年後半以来下落基調で推移しているからです。
この状態で外部成長を焦って不用意に増資に踏み切った場合、ディスカウント増資となって、さらなる投資口価格の下落を招く可能性が高いと考えられます。
以上のように、同投資法人が外部成長見通しをトーンダウンさせたのは、パイプラインと資金調達の双方から外部成長へのブレーキがかかっているからだと考えられます。
この隘路を乗り越えて同投資法人が「資産規模1,000億円」という目標を達成するには、増配を着実に重ねて投資口価格を上昇基調に反転させる必要があります。
しかし、その道も決して平坦ではありません。
何故なら、同投資法人について冒頭で取り上げた安定的な収益構造が逆に足枷となり、今後約7年の賃料収入拡大の余地を大きく制限してしまっているからです。
残る方策として考えられるのは小規模な物件取得による賃料収入の拡大ですが、こちらも取得資金の調達に当たってLTV上限やディスカウント増資の危険性を念頭に置いた微妙なさじ加減が求められることに変わりはありません。
同投資法人にとって正念場と言える状況がしばし続きそうです。
※1:第4期(2018年6月期)決算説明会資料P10に記載。
※2:CRE 2019年7月期第1四半期有価証券報告書による。
※3:第5期(2018年12月期)決算説明会資料P29に記載。
※4:第5期(2018年12月期)決算説明会資料P29に記載の有利子負債額と鑑定評価LTVより著者が算出。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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