5月27日週のニュース概観
(写真/iStock)
5月30日、株式会社大和証券グループ本社とサムティ株式会社(以下、それぞれ大和証券及びサムティ)がホテル開発ファンドの立上げ及び2020年度を目途としたREITの組成を中核とする資本業務提携を行うと発表した。
まず業務提携では、両社は当初出資額150億円、借入調達資金も含めた総運用額で300億円前後のファンドを立ち上げてホテル開発を進め、竣工した物件や既にサムティが保有しているホテルを新REITに組み込んでいくという。
次に資本提携では、サムティが6月14日を基準日として自己株式及び新株予約権付社債を大和証券に割り当てて約127億円を調達し、引き換えに大和証券が同社の最大株主となる見通し(新株予約権付社債を全て株式に転換し、取得したサムティ自己株式と合わせると大和証券のシェアは27.27%となる)(※1)。
この資本業務提携によるメリットとして、サムティ側は調達した資金による新規中期経営計画「サムティ強靭化計画」の加速と目標の早期達成等、大和証券側は不動産を含むオルタナティブ投資分野での収益力強化等をそれぞれ挙げている。
今回の案件で気になるのは、新規組成予定のホテルREITと大和証券が既にスポンサーとなっているホテル特化型私募REIT「大和証券ホテル・プライベート投資法人」の関係である。
大和証券ホテル・プライベート投資法人にとって、今回のサムティ・大和証券資本業務提携で同じ用途を投資対象とするREITの新設が目標として掲げられたことは外部成長の面で逆風とならないのだろうか。
そこで大和証券ホテル・プライベート投資法人の投資方針を見ると、「ビジネス/観光両面の需要取り込みを期待し得る東京23区を最重点投資エリア(70%以上)とする」とある(※2)。
次にサムティが保有する若しくは開発中のホテル12件の地域別内訳をみると、近畿6件、東京3件、九州2件、中部1件となっている(※3)。
こうした大和証券ホテル・プライベート投資法人の方針とサムティがそもそも近畿を主要な事業基盤としている企業であることを考え合わせると、新設されるサムティ・大和証券共同ファンドとホテルREITは西日本中心に、そして大和証券ホテル・プライベート投資法人は従来通り東京を中心に、という形で棲み分けが行われると推測される。
したがって、今回の資本業務提携が大和証券ホテル・プライベート投資法人に与える影響についてあまり神経質となる必要はなさそうだ。
【注釈】
※1.サムティが5月30日に開示した資料「大和証券グループとの資本業務提携、
第三者割当による自己株式の処分及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行、
株式の売出し並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」によると、
2018年11月30日時点での同社の最大株主は、12.57%を押さえる森山茂氏(創業メンバーにして現代表取締役会長)。
また、大和証券の子会社大和PIパートナーズ株式会社もサムティの株式を保有しており、
それも含めると、自己株式及び新株予約権付社債割当て後の大和証券グループによる持ち株比率は最大29.94%となる。
なお当該資料のURLは以下の通り(2019年5月30日更新 最終閲覧日:2019年6月3日)。
https://www.samty.co.jp/news/auto_20190530441201/pdfFile.pdf
※2.大和証券ホテル・プライベート投資法人のホームページより「投資法人の特徴」参照。
当該ページのURLは以下の通り(最終閲覧日:2019年6月3日)
https://daiwa-hp.co.jp/about/features.html
※3.上記資料「大和証券グループとの資本業務提携、第三者割当による自己株式の処分
及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行、株式の売出し並びに主要株主である
筆頭株主の異動に関するお知らせ」による 。
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