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マーケットコラム

2014年のJ-REIT市場はボックス圏での推移へ/アイビー総研 関 大介

2013-12-19

関 大介

 J-REITの価格は、米国QE3(量的金融緩和政策)の縮小観測が強くなるとともに軟調に推移しました。東証REIT指数は、1,450ポイントを割り込み12月18日の終値は1,436.40ポイントとなりました。

J-REIT市場では来年のNISA制度スタートに伴う投資口分割の動きが続いています。で今年の年初来高値が100万円を超えている銘柄7銘柄のうち12月に入りフロンティア不動産投資法人(証券コード8964)が2014年1月から2分割、日本ロジスティクスファンド投資法人(証券コード8967)が2014年2月から5分割、日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283)が2014年3月から5分割を行ないます。このような動きによってNISA制度で個別銘柄投資を行う余地が広がったことになります。

さて、今回は2014年のJ-REIT市場を展望したいと思います。2013年のJ-REIT価格は、大幅な上昇を示しました。一方で2014年は東証REIT指数で見ると1,400ポイントから1,600ポイントを中心としたボックス圏で推移するものと考えられます。12月19日の東証REIT指数終値が1,431.91ポイントとなっていますので、現状よりやや高い水準での推移になりそうです。

その最大の要因は、いわゆるアベノミクスによる景気回復がオフィス市場に与える好影響はこれからが本番と言えるためです。オフィスビルを移転する場合、テナントは一般的に解約の6ヶ月前に現在入居しているビルの貸主に解約通知を出す必要があります。例えば12月に移転しているテナントの大半は、今年6月の時点で解約予告を出しているのです。企業の2013年3月期決算の発表は5月に集中していますので、アベノミクスの効果をいち早く受けた企業の移転が12月に入ってやっと始まっていると考えられるのです。

今後さらに景気回復が本格化すれば、スローペースでの改善に留まっているオフィスビル賃貸市場の急速な回復が実現することになります。J-REITは時価総額1位・2位の銘柄がオフィスビル投資に特化しているだけでなく多くの銘柄がオフィスビルに投資しています。オフィス市況の大幅回復は、オフィスビルに投資している銘柄の分配金増加に繋がることになるのです。この場合、オフィス投資銘柄の価格が上昇するだけではなく、他用途に投資する銘柄も相対的な割安感から価格上昇を起こす可能性があると考えられます。

さらに2014年1月からNISA制度がスタートすること及び日銀のJ-REIT買入れ枠が回復することもJ-REIT価格の安定に寄与するものと考えられます。

まずNISA制度のスタートによって効果ですが、金融機関が積極的にJ-REITを投資対象とする投資信託(以下、J-REIT投信)を販売する可能性があることが指摘できます。ただし2013年のJ-REIT投信の買越し額は、10月末までで3,400億円を超え、通年で過去最高だった2006年の買越し額1,271億円を凌駕しています。この点で見ればNISA制度スタートによる価格上昇効果は、J-REIT投信の買越し額の大幅増資が期待しにくいことから一定程度しかないものと考えられます。

次に日銀のJ-REIT買入れ枠回復の効果ですが、NISA制度スタートと同様に大幅な価格上昇要素とはならないものと考えられます。日銀が4月に公表した異次元金融緩和では、2014年中に300億円のJ-REIT買入れを行うことになっています。2013年の買入れ枠も300億円の増額でしたが、金融緩和の公表時点で131億円を「消化」済でした。そのため、日銀は金融緩和公表後に積極的な購入はできず、6月以降の買入は実施ごとに1億円しか購入できませんでした。2014年になれば、一転して日銀はフリーハンドでJ-REIT購入が可能となるのです。しかし、後述する通り2014年後半には景気の腰折れが懸念される状況となっています。従って日銀は、300億円の枠を2014年後半のために慎重に消化する可能性があるのです。

このようにJ-REIT市場にはプラス材料が多くなっていますが、夏以降の価格動向は弱めに推移する可能性があります。その最大の理由は、消費税増税のマイナスインパクトが大きいと考えられるためです。増税の悪影響は、夏を過ぎると様々な数値として顕われてくることになると想定されるのです。この場合は、回復に向かったオフィス市況に暗雲が垂れ込める可能性があります。オフィス市況の回復を見込んだ投資家の売り圧力がJ-REIT価格を引き下げる要因となりそうです。

ここまで記載してきた通り、J-REIT価格は、夏前までは上述のプラス材料が奏功し順調に価格が上昇し、秋口には下落する可能性が高くなっています。ただし、2014年10月に消費税率を10%に引き上げるための判断を行うため、その時期前後に経済対策が打ち出されることになると見られます。従って大幅な下落相場という状況にはならないものと考えられます。

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