REIT注目記事
伊藤忠、物流施設特化型REIT組成を目指して開発を推進
8月1日週のニュース概観
(写真/PIXTA)
概況
8月1日、伊藤忠商事が2件のマルチテナント型物流施設竣工を発表した。今回竣工が発表されたのは、千葉県野田市の「アイミッションズパーク野田」(竣工日は2月28日)、および大阪府堺市の「アイミッションズパーク堺」(竣工日は6月24日)。
また同社は現在茨城県つくばみらい市と東京都足立区でも物流施設開発計画を進めており、物流施設開発プロジェクトは総額で1,500億円に迫りつつある。将来的に物流施設特化型REITの組成を目指して開発案件を積み上げている伊藤忠の今後が注目される。
※伊藤忠商事が運営する物流施設アイミッションズパークのリーシングサイト
https://imissionspark.com/
また同日、2件の私募REIT、ニッセイプライベートリート投資法人とDBJプライベートリート投資法人がそれぞれ運用を開始した。
ニッセイプライベートリート投資法人は日本生命保険(以下、日生)をスポンサーとし、資産規模約300億円での運用開始となる。成長計画として今後1年程度で1,000億円程度、中長期的に3,000億円程度という見取り図を描いている。スポンサーの日生は2016年3月末時点で約10,796億円の投資用不動産を保有しており、着実な外部成長が期待できそうである。
DBJプライベート投資法人は日本政策投資銀行グループをスポンサーとし、資産規模約330億円で運用を開始。ポートフォリオのタイプは総合型でDBJ Green Building認証制度等の環境認証取得物件への投資を基本とするという。今後5年程度で資産規模1,500億円への到達を成長目標として掲げている。
8月4日、不動産流動化事業や再生エネルギー等を手掛ける燦キャピタルマネージメントが一般社団法人全国寺社観光協会(以下、全国寺社観光協会)から「宿坊」の開発・運営プロジェクトに係る投融資アレンジメント業務を受託したと発表した。
「宿坊」とは寺社における僧侶や参拝者を対象とした宿泊施設だが、最近は一般観光客にも門戸を開くところが増えてきた。全国寺社観光協会としては、燦キャピタルマネージメントから投資ファンドやSPCの組成、宿坊の信託化や流動化といった資金調達面でのサポートを受け、宿坊の開発・整備を推進し、日本の歴史・伝統文化が体験できる点をアピールして最近の外国人観光客急増による宿泊施設需要の高まりを取込みたい考え。
通常のホテル開発とは一風変わった方向からの宿泊施設供給が奏功するか、非常に興味深い。
物件動向
8月1日週は、以下の3件の物件開発動向が報じられた。企業別で見るとうち2件が三菱地所の案件であり、同社の積極的な投資姿勢が印象付けられる結果となった。
- a. 大阪府大阪市:「(仮称)大阪南船場ホテル計画」
- 8月1日、三菱地所が同日付での着工を発表した。開発計画は、堺筋線「長掘橋駅」から徒歩5分の立地約1,214㎡に地下1階地上13階、客室数300室前後、延床面積7,600㎡のホテルを建設するという内容。2017年11月の竣工と翌月のホテル開業を予定している。
現在、外国人観光客の増大でホテル需要が旺盛な大阪だが、三菱地所は当面活況が続くと見て当該地域でのホテル開発を今後も進めていくという。 - b. 茨城県守谷市:「ロジスクエア守谷」計画
- 8月2日、シーアールイーが同日付での着工を発表した。常磐自動車道「谷和原IC」から約2kmの敷地約25,446㎡に地上2階、延床面積約34,223㎡のマルチテナント型物流施設を建設するという開発計画で、竣工は2017年5月下旬を予定している。
当該計画の着工により、シーアールイーが2016年内に着工予定としていた開発計画4件は全て着工済みとなった。 - c. 大阪府大阪市:「ロジポート大阪大正」計画
- 8月3日、三菱地所がラサール不動産投資顧問と組んで大阪市大正区でマルチテナント型物流施設の開発を行うと発表した。開発される物流施設の規模は地上4階建て、敷地面積約55,500㎡、延床面積約122,100㎡。今年12月の着工と2018年1月末の竣工を予定している。
三菱地所がラサール不動産投資顧問と組んで進める物流施設開発案件としてはロジポート橋本やロジポート相模原に続く3件目。ロジポート橋本やロジポート相模原はラサール不動産投資顧問がスポンサーであるラサールロジポート投資法人の投資物件となっている(ロジポート橋本の信託受益権の準共有持分割合55%、ロジポート相模原の信託受益権の準共有持分割合51%をそれぞれ保有)。一方で三菱地所もMJ物流リート投資法人を設立しており、当該物件の今後の行先が興味深い。