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2016年03月10日
【中編】<今注目のJ-REITが集結する>J-REITファン2016 報告
個別レポート報告
1.講演会・トークセッション(続き)
- 日本経済を支えるJ-REITの可能性
- マーケットカタリストとしてメディアでも活躍中の櫻井英明氏を座長に、以下の錚々たるメンバーを演者として活発な議論が行われました。
「アベノミクスとリート」というテーマでは、堀野氏(森トラスト・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長)が「企業活動が活発化したことで、オフィスの貸し手のマインドが強気になってきた。賃料の増額にも積極的に動き出してきた」と評価しつつも、最近の金融市場の下落、中国経済の減速が冷や水となっており、まだ事態は単純な楽観を許さないとの見通しを示しました。
また秋元氏(株式会社星野リゾート・アセットマネジメント 代表取締役社長)は、円安やビザ要件緩和等によるインバウンドの盛り上がりが観光産業に大きな恩恵をもたらしたとしつつ、遠からず外国人観光客の嗜好も高級路線に転じてくる可能性が高く、それに受入れ側が対応していくことが現在の活況を維持していく上で重要としました。
「少子高齢化」というテーマでは、吉岡氏(ヘルスケアアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長)が国民の5人に1人が75歳以上となる「2025年問題」を挙げ、身内や小規模経営では介護需要に応えていくことは困難になっていくと指摘しました。その上で、大規模化した介護需要を満たしていくには民間資金を活用することが非常に重要であり、開示が充実し透明性の高いリートという仕組みが役立つ場面が今後ますます増えていくだろうと予測しました。
最後は「リートで日本が抱える問題の解決に活用するために必要なこと」がテーマとなりましたが、松本氏(インベスコ・グローバル・リアルエステート・アジアパシフィック・インク インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人担当ファンドマネージャー)の「米国等のように日本のリートも森林や大学、刑務所といった様々なアセットを組み込んでいく必要がある」、「そうしたリートの活動範囲、資金調達手段を拡大していくために法制度等の改革も望まれる」という指摘に会場の誰もが深く頷いたところでセッションは幕を下ろしました。 - 特別講演「2016年マーケットの行方とJ-REIT投資」
- 国際経済や歴史も交えた大きな視点から株式市場の分析を行う武者氏(株式会社武者リサーチ代表)ですが、現在の経済情勢について、技術革新とグローバル化による投資コストの低減で企業利潤が拡大を重ねる一方で再投資先を失いつつあるのが現在の経済だとまず述べました。そして2015年後半から現在までの金融市場の波乱を「かつての企業利潤の主要流入先であった中国経済のハードランディングを織り込もうとするもの」と位置付け、金融市場の不安定な動きは当面続くとし、その中で継続的、安定的に利回りにして3.5%程度の分配金を産み出しているリートの魅力も高まってくるのではないかという見立てを示しました。
それを受け、鳥井氏(SMBC日興証券株式会社 株式調査部シニアアナリスト)はリートのより具体的な利回りの推移、オフィス等の実物資産市場の価格や賃料の動きといった各種データを紹介し、そこからリートのファンダメンタルは依然として堅調であると結論付けました。また最後は日銀マイナス金利導入を取り上げ、リートの金利負担低減、国債利息とリート分配金の利回り格差拡大によるリートへの資金流入促進が期待できるとし、リート市場にとってマイナス金利はプラス要素と評価して特別講演会を締めくくりました。
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