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ラサール、バリューアッド運用を念頭に札幌市商業施設取得
4月24日週のニュース概観
(写真/PIXTA)
概況
4月26日、外資系不動産投資顧問会社のラサール・インベストメント・マネージメント・インク(以下、ラサール)が同日付での北海道札幌市の商業施設取得を発表した。
今回ラサールが取得したのは、札幌市白石区にあるマルチテナント型商業施設「iias札幌」。食品スーパーを中核としてスポーツジムやアパレル、100円ショップ、飲食店舗といった生活密着型店舗に加え、学習塾やクリニック等が入居しているという多様性に富んだテナント構成が特徴(総店舗数は90店舗)。
当該商業施設は自動車や地下鉄による札幌市中心部からのアクセスに優れた立地にある他、白石区自体が札幌市全体の人口増加率を上回っていることもあり、ラサールは安定的な売上が今後も見込めるとしている。
今回の案件で特徴的なのは、ラサールが「バリューアッド投資」を打ち出している点だろう。永続的に物件を保有してそこからの賃料収入を投資収益とする「コア投資」と異なり、「バリューアッド投資」は割安に取得した物件の収益性を向上させて最終的に当該物件を売却することで投資収益を稼ぎ出す投資手法である。
日本の不動産投資市場については「コア投資を採用する運用者だらけで投資戦略の多様性に欠けており、これが運用人材の育成やよりリスク選好的な投資マネーの流入のネックになっている」との声もあるだけに、今回のラサールの投資案件以外でもバリューアッド投資の動きが盛り上がっていくことを期待したい。
4月27日、不動産鑑定大手の大和不動産鑑定株式会社が株式会社四国銀行(以下、それぞれ大和不動産鑑定、四国銀行)との業務提携契約締結を発表した(契約締結日は4月21日)。
当該契約の内容は、四国銀行の地盤である高知県及び近接県の不動産保有会社を対象とし、同銀行と大和不動産鑑定が連携して事業継承やM&A、経営者の相続対策への支援サービスを提供するというもの。
大和不動産鑑定は既にM&A支援業務提携契約を仙台銀行やきらやか銀行子会社との間で締結しており、地銀と連携した企業経営者向けサービス提供で他の不動産鑑定大手より一歩先んじた形となっている。この先、大和不動産鑑定との業務提携に踏み出す地銀がどれだけ増えてくるか、注目される。
4月28日、スターアジア不動産投資法人が開示資料の中で自己投資口の取得に前向きな姿勢を示した。
同投資法人の開示資料「不動産投資信託証券に関する発行者等の運用体制に関する報告書」(2017年4月28日開示)には、投資主利益第一主義追及の一環として、自己投資口の取得を「資本政策における有力な手段として捉えています」と記載している。
無論、この記述から「スターアジア不動産投資法人は自己投資口取得を決定した」と断定するのは行き過ぎだろう。一方で株式市場において自己株式の取得は発行会社が市場に対して「自社株式が割安に放置され適正に評価されていない」と発信する手段ともなっている。そしてスターアジア不動産投資法人の投資口価格が一時の低迷を脱したとはいえ、2017年4月28日終値で97,900円と上場日2016年4月20日終値98,300円と殆ど変らない水準に留まっていることを考えるなら、同投資法人が自己投資口取得に踏み切っても不思議ではない状況になったとはいえる。
もし仮に今後スターアジア不動産投資法人が自己投資口取得を実行することになった場合、J-REITとしては初の自己投資口取得となり得る他、バランスシート圧縮効果を持つ自己投資口取得と同投資法人が掲げている「2020年までに資産規模2,000億円到達」(2017年4月28日時点の取得価格ベース資産規模は753億円)という成長目標との両立という点からも極めて興味深い事例となろう。
物件動向
4月24日週の物件動向だが、以下の案件が発表された。
- a.東京都千代田区:「(仮称)神田錦町二丁目計画」
- 4月27日、住友商事株式会社(以下、住友商事)が東京都神田エリアで進めている再開発計画について、5月1日に着工すると発表した。
当該再開発計画は東京電機大学神田キャンパス・神田警察署跡地約9,800㎡に、地下1階地上21階、延床面積約85,000㎡のビルを建設し、オフィスを中心とした複合施設として活用するというもの(竣工は2020年3月末の予定)。総事業費は1,000億円を超え、住友商事単独での不動産開発としては過去最大の規模だという。
住友商事はJ-REITのスポンサーとはなっていないものの、総合型の私募リート「SCリアルティプライベート投資法人」のスポンサーではあることから、将来的に当該再開発計画で建設された物件を同投資方法人が取得することも想定される。