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「2017年大和サンクスセミナー」レポート 1/2
主催:大和不動産鑑定株式会社 特別講演開催!建築家 安藤忠雄氏
(写真/PIXTA)
東京都心部物件のキャップレートが過去最低水準に達し、地方物件への投資資金流入が続く等、依然好調を維持している不動産投資市場ですが、一方で各種投資家アンケートの回答結果を見ると現在の市況にピークアウトの気配を感じる声が増えているようです。
何とも方向性の掴みにくい状況ですが、アナリストや専門家はどのような現状認識と先行き見通しを持っているのでしょうか。 大手不動産鑑定会社の一角である大和不動産鑑定株式会社が7月12日に開催した「2017年大和サンクスセミナー」で色々とお話を伺ってきました。
当該セミナーの内容及び講師の方々は以下の通りです。
1.アジア・アメリカの最新市場動向
スピーカー:浅野美穂 大和不動産鑑定株式会社
2.2017-2018不動産市場の展望
パネリスト
・小夫孝一郎 ドイチェ・アセットマネジメント株式会社
・今関豊和 三幸エステート株式会社
・竹内一雅 株式会社ニッセイ基礎研究所
モデレーター
・室津欣哉 大和不動産鑑定株式会社
3.土地の価値を上げる
スピーカー:安藤忠雄 建築家
それでは、各内容を上から順にご紹介したいと思います(以下、会社名の「株式会社」を省きます)。
1.アジア・アメリカの最新市場動向
スピーカーの浅野氏は、大和不動産鑑定の執行役員とともに国際室室長を務められています。その日々の業務で接する情報、データに基づいてアジアやアメリカの不動産市場動向についてご説明頂きました。
まずアジアの不動産市場動向ですが、大和不動産鑑定が作成・発表している「アジア・オフィスプライス・インデックス」によると香港の好調さが今のところ目立っているということでした。
一方で、商業施設開発が活発でCMBS市場も整備されているタイ、若年層人口の大きさあからさらなる経済成長を期待できるベトナム、米ドル決済が定着して容易なカンボジア、首都マニラを中心にオフィス需要が盛り上がっているフィリピンといった国々への投資についても問い合わせが増えているそうです。
最近、日本企業の東南アジア不動産市場への参入を報じるニュースが目立つようになってきましたが、浅野氏の説明からすると、この流れはさらに加速していくのかもしれません。
続いてアメリカの不動産市場です。こちらの話題で興味深かった点が2点あります。
1点目は、e-コマースの発展に押される形で商業施設の取引額が減少傾向にあるという点です。個人消費を巡る商業施設とe-コマース(とその背後にある物流施設)とのせめぎ合いは、どうやら米国では後者優勢で進んでいるようです。
2点目は、地域別の利回り格差です。浅野氏が示した資料によると、ニューヨークやサンフランシスコといった東海岸、西海岸の都市部の利回りが4%台なのに対し、シカゴやダラス、デンバーといった中西部の都市では6%台になっています。ここから、好調な金融やハイテク産業が集積する東海岸や西海岸ではオフィスを中心とした不動産投資が活発な一方、新興国との競争で劣勢に立たされている製造業が多い中西部には相対的に投資資金が流入していない構図が浮かび上がってきます。中西部の製造業復活を掲げて選挙で勝利したトランプ大統領の下で、この構図が今後どのように変わっていくのか興味深いところです。