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いまさら始める?個人不動産投資
高橋 克英 (著)
いまさら始める? 個人不動産投資 (KINZAIバリュー叢書)
好調な市況と金融機関の積極的な貸出姿勢が続く中、老後への漠とした不安と公的年金への根強い不信感もあってか、安定的な収入源として不動産投資に関心を持つ個人が多いようです。
そうした世相を反映してか、少し大きめの書店に行くと、個人投資家を対象とした不動産投資本が数多く平積みされています。その中から、今回は「いまさら始める?個人不動産投資」を取り上げたいと思います。
見ようによってはやや挑発的にも見えるタイトルの本書を覗いてみると、まず不動産投資を開始し継続していくことができる条件として挙げられているのが「年収1,000万円」というハードル。この時点で本書が「低収入の自分が不動産投資で富裕層の仲間入り!」という夢溢れるストーリーで個人投資家の歓心を買おうとする多くの類書とは一線を画した存在であることが明々白々となります。
そして不動産投資を開始するにあたって年収と並ぶ重要点として挙げられているのが、信頼できる不動産会社、管理会社と出会えるか否かという点。不動産投資というとどうしても「どんな物件を取得できるか」に焦点を合わせてしまいがちですが、本書は継続的に収益の上がる物件を仲介してくれる不動産会社、取得物件の管理を円滑に処理してくれる管理会社とどのようにして強固な取引関係を構築していくかが死活的に重要なのだと説きます。
確かに1人の人間が投資物件の掘り出し、保有物件の管理・修繕に費やせる時間や能力には限界があります。本書でも挙げられている様々な不動産管理業務に目を通してそれを全て自分1人だけで行わなければならない状況を想像すると、ビジネスとして継続的に不動産投資を行うのに専門業者を交えたチームを作ることが如何に重要か、よりリアリティをもって実感できることでしょう。
繰り返しになりますが、甘い言葉と美しい夢で投資家を惹きつけようとする不動産投資本は珍しくありません。その中である程度以上の収入・財産を持つ人物が不動産会社や管理会社と上手く付き合い、金融機関から優良な融資先として信頼してもらうことで初めて安定的な収入源としての不動産投資が可能になるのだという主張、そしてその実現のために必要となるノウハウの数々を載せる本書は、読む者に若干のほろ苦さ、耳の痛さを感じさせつつも十分な説得力を以って迫ってきます。まさに「良薬口に苦し」な一冊でした。