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上場インフラファンド市場、5銘柄目の上場承認
8月20日週のニュース概観
(写真/iStock)
概況
8月24日、東証が上場インフラファンド5銘柄目の上場を承認した。承認されたのは東京インフラ・エネルギー投資法人(上場予定日は9月27日)。
当該投資法人について同日付で提出・公表された有価証券届出書を確認すると、投資方針として再生可能エネルギー発電設備への投資を謳っており、上場時に取得する予定の物件5件は全て太陽光発電所。
初期ポートフォリオを見ると、取得予定価格の総額は約85億円で、そのうちTI矢吹太陽光発電所だけで約58億円、パーセンテージにして68%程度を占める構成(取得予定物件の発電出力合計に占める比率でも65%程度をTI矢吹太陽光発電所が占める)。
気になるスポンサー構成は以下の通り(カッコ内の数字は当該投資法人の資産運用会社東京インフラアセットマネジメント株式会社への出資比率。また以降「株式会社」を省略)。
・株式会社アドバンテック(50.7%)
・東京インフラホールディングス株式会社(42.8%)
・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(5.0%)
・NECネッツエスアイ株式会社(1.5%)
上記各社のうち、メイン・スポンサーのアドバンテックは半導体製造装置やテスト用ウェハー等の製造、販売、リサイクルを手掛ける他、隣接分野として太陽光発電所の開発も行っている(産業用コンピューターやマザーボードの開発・販売を行っている台湾企業アドバンテックとは別個の企業)。そしてサブ・スポンサーの東京インフラホールディングスはアドバンテックの子会社(株式58.3%を保有)であり、資産運用会社の株式9割以上はアドバンテック系が押さえる形。
今後の東京インフラ・エネルギー投資法人の外部成長だが、メイン・スポンサーであるアドバンテックは現在20件の太陽光発電所を運営し、加えて5件の開発を進めている。この計25件から適宜当該投資法人に売却が行われていくものとみられる。
なお、現在の税法上、J-REITと違って上場インフラファンドには導管制(当期純利益のうち分配金相当額を非課税とするもの)に期限が存在するが、当該投資法人の期限は2038年6月30日まで。
今回5銘柄目が上場を承認された上場インフラファンド市場だが、市場の更なる拡大と定着のためには、やはりJ-REITに倣った導管制の恒久化、SPCを通じて物件を取得した場合の導管制要件の緩和といった政策的なてこ入れが必要と思われる
物件動向
8月20日週の物件動向だが、以下の案件が発表された。
- a.大阪府大阪市:「もと扇町庁舎用地及びもと扇町庁舎南側用地売却に関する開発事業者募集プロポーザル」
- 8月24日、大阪市水道局が大阪市扇町庁舎跡地の再開発計画で事業予定者を公募していた件について、ヒューリック株式会社と一般財団法人仁厚医学研究所から成る連合が事業予定者に選定された(以下、それぞれヒューリック、仁厚医学研)。
当該跡地についてヒューリック・仁厚医学研連合は、大阪市水道局が保有する当該跡地約9,100㎡をヒューリックが取得し、地下1階地上13階、延床面積約5.3万㎡のビルを建設、約560床の高度急性期医療施設を中心に劇場やカフェ等が入居する複合施設として活用する案を提出していた(医療施設部分は医療法人医誠会が賃借予定)。
この選定を受け、大阪市扇町庁舎跡地の再開発計画は、2018年9月頃に再開発地の売買契約締結、2020年8月頃の建設工事着工、2022年10月頃に竣工物件の供用開始というスケジュールで進んでいくことになる。