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決算説明会資料拾い読み ジャパン・ホテル・リート投資法人
2018年12月期(第19期)決算説明資料
今回取り上げるのは、2019年2月20日に開示されたジャパン・ホテル・リート投資法人(以下、同投資法人)の第19期(2018年12月期)決算説明会資料です。
同投資法人は、2012年4月1日にジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人と日本ホテルファンド投資法人が合併して誕生した銘柄で、現存するホテル特化型J-REITとしては最古参の銘柄です。
スポンサーとしては、シンガポール系ファンド会社SC CAPITAL PARTNERSがメイン、共立メンテナンスやオリックスがサブとしてそれぞれ参画する体制になっています。
同投資法人の資産規模(取得価格ベース)は2019年2月1日時点で約3,121億円、用途は全てホテルで、地域別投資比率(取得価格ベース)は東京とそれ以外の関東圏が合わせて約38%、関西が約26%、沖縄が約14%、その他地域が約22%という構成です。
そんな同投資法人の決算説明会資料で注目されるのが「外部成長」です。
投資法人が当期に取得した、または取得契約を締結した物件を決算説明会資料で紹介することは特段珍しいものではありませんが、2019年4月8日付(第20期)でヒルトン東京お台場を取得する件は、1月8日付で開示済とはいえ、取得価格の大きさと売り手の動向という点で目を引くものがありました。
同投資法人によるヒルトン東京お台場の取得価格は約624億円。
これは同投資法人にとって従来の旗艦物件だったホリデイ・イン大阪難波の取得価格270億円を大きく上回り、J-REIT全体としてもホテル単体としては最大の取得価格となります(※1)。
取得額が資産総額の約20%にあたる大型取得に踏み切った理由として、同投資法人は以下の点を挙げています。
・当該ホテルが東京では希少な高級ホテルであること(※2)。
・顧客として内外の利用客をバランスよく取り込んでいること(※3)。
・一帯に観光資源が集積し2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降も活発な利用客流入が見込める立地であること(※4)。
また、ヒルトン東京お台場の売り手であるヒューリック株式会社(以下、ヒューリック)の存在も見逃せません。
ヒューリックはゆりかもめ「台場駅」を挟んでヒルトン東京お台場の真向かいにある大型ホテル「グランドニッコー東京 台場」の底地を保有しています(※5)。
2019年5月には建物部分も取得する予定で、経営資源をグランドニッコー東京 台場に集中させるための準備として、ヒルトン東京お台場を手放した可能性が考えられます。
ゆりかもめ「台場駅」を挟んで同じホテル事業で対峙することになった同投資法人とヒューリック、両社のホテル競争がお台場への利用客流入をさらに拡大させて相互に潤う結果をもたらすのか、それともどちらか一方に不本意な結果をもたらすのか、次期以降のヒルトン東京お台場の運営成績に注目です。
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※1:2019年1月8日開示の「資産の取得及び貸借に関するお知らせ(ヒルトン東京お台場及びホテルオリエンタルエクスプレス大阪心斎橋)」による。
※2:国際的なホテル・リゾート評価で有名なFive Star Alliance社のサイトでヒルトン東京お台場は4つ星を獲得しているが、東京において4つ星以上(最大ランクは5つ星)のホテルは28件のみ。
https://www.fivestaralliance.com/luxury-hotels/679/asia/japan/tokyo
※3:第19期(2018年12月期)決算説明会資料P11の国別客室販売割合(2018年)によると、日本が46%、外国が54%(最多は米国の約18%)という構成。
※4:第19期(2018年12月期)決算説明会資料P13による。
※5:2016年4月26日のヒューリック開示資料「「ホテルグランパシフィック LE DAIBA」 の取得並びに 「グランドニッコー東京 台場」(日本初)へのリブランドについて」による。
なお、※2でも取り上げたFive Star Alliance社による評価では、グランドニッコー東京 台場は旧名称の「ホテルグランパシフィック LE DAIBA」で4つ星を取得している。