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2022年12月21日

「REITキーマンに聞く!」株式会社三菱UFJ銀行 次長 坂田 元樹氏

今回は、株式会社三菱UFJ銀行 ソリューションプロダクツ部 不動産ファイナンスグループREITチーム 次長 坂田 元樹氏に金融機関から見たREIT業界の動向に関してインタビュー形式でお話をしていただきました。

株式会社三菱UFJ銀行 坂田 元樹氏

――供給が増えていると言いますと、コロナ禍でも強さが際立ったのが物流施設だったと思います。改めて金融機関から見て物流市場の成長余地や懸念されている点をお聞かせいただけますでしょうか。

まず、物流市場自体は引き続き伸びていくと見ています。先進的な物流施設自体が今後の物流インフラも支えていくと考えており、まだまだ不足しているのではないかと思っています。一方で、懸念としては近年開発コストが非常に高くなっているところです。これから開発した場合に、マーケット賃料では開発コストを賄えないケースも出ていると聞いています。このような状況を踏まえますと、一旦マーケットへの物件供給は若干落ち着いていくのではないかと見ています。また、一般的に物流施設は減価償却費が大きいことが特徴です。REITは制度上、減価償却費を除いた利益部分が配当に回ります。利益がしっかり出ない状態ではREITは取得できません。今後も伸びていくには、しっかりと利益の出せる物流施設が供給されることが大事だと考えています。

――オフィスは景気が良くなれば賃料をあげられます。一方で、物流施設と賃貸住宅は建築コストが上がったからといって、簡単に賃料を上げることは難しいですからね。

おっしゃる通りです。あともう一つ、物流施設は基本的に賃貸契約が長期に亘ります。実際オフィスやレジでは2、3年ごとに更新するのが一般的です。一方で、物流施設の場合5年、長ければ10年、20年というような賃貸形態を取るケースが多くあります。安定的な賃料が見込めることは良いのですが、今後金利が上がってきた場合に、賃料の上昇が見込めないとすれば、投資に対する見方が分かれてくると考えています。

――金融機関として、かなり長期間の融資を行われています。REIT市場全体に対して長期的にはどのような展望をお持ちですか。

J-REIT市場ができて20年を超えましたが、金融の目から見るとこれまでに起きなかったことが起こるのではないかと考えています。例えば金利も過去20年間振返ってみれば、波はあったものの一貫して低下してきました。今の金利水準や諸外国の金利政策を考えると、今から金利が下がると考える人は少ないと思います。大事な事は「いくら金利が上がる」といった数字の予想ではなく、私を含め金利が上がった局面を経験したことがない人達がマーケットのメインプレイヤーになっているという事です。言い換えれば、REITに関わる方々の多くは金利が上がったことを経験したことがない方々で構成されていて、中長期的な展望で言っても、そこがある意味懸念と言いますか、そこをどう対応していくかが市場全体としての課題だと思っています。過度に保守的に『金利が上がるから今のうちに長期で調達したほうがいいですよ』、とか逆に『短くした方がいいですよ』と言うつもりは全くありません。金融機関として金利が上がっていくかもしれないところを、どう折り込んで安定的な配当に繋げていくのか、REIT各社にアドバイスしていくことが大事だと思っています。繰り返しになりますが、我々現役銀行員の大半は金利が上がったことがない世代になりますから、そこを踏まえた上でみなさまのニーズに対して、しっかり提案できるようにしていかなければと思っております。

――リーマンショックの後、貸出スプレッドは若干広がりましたが、基準となる市場金利自体は下がっていましたので、これから各REIT真価が問われるというか、財務面での配慮が必要になってくると思いますね。

 

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