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「REITキーマンに聞く!」三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社 代表取締役社長 亀岡 直弘氏
今回は、三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社 代表取締役社長 亀岡 直弘氏に業界動向やファンドの特徴に関してインタビュー形式でお話していただきました。
――保有物流施設の特徴についてお聞かせください。
保有物流施設の特徴は、大型マルチテナント型物流施設(LMT)とそれ以外の物件のバランスに配慮しながら投資していることです。
LMTでは、複数のテナントが1つの物流施設を共有するため、入居するテナントが必ずしも自分達にとって最適な使い方ができないことがあります。我々が個人として住宅を選ぶ際に、タワーマンションが良いという人もいれば、戸建てを好む人もいます。同様に物流施設でも、好立地に十分な面積を確保できるのであればLMTでも構わないと考えるテナントがいる一方で、自身のオペレーションに最適な使い方ができるようにシングルテナント型の物流施設を好むテナントもいます。日本ロジではそのような幅の広いテナントニーズにこたえるために、LMTもLMTではないシングルテナント型の物流施設も両方保有する必要があると考えています。
同時に、LMTとLMTではない物流施設の間の平均的な賃貸借契約期間の違いも重要だと考えています。一般的には、LMTの賃貸借契約期間は比較的短いため、常に一定の空室が発生する傾向があります。この方式の良い所は、頻繁にテナントとの契約更改を行うことで、賃料上昇局面において賃料のアップサイドを追求しやすい点が挙げられます。しかしそれは同時に不利な点でもあり、賃料下落局面では物件のキャッシュフローが減少してしまう可能性があります。一方、LMTではない物流施設は比較的賃貸借契約期間が長く、賃料も固定の事例が多いという傾向があります。これは賃料のアップサイドが相対的に少ない代わりにダウンサイドも限定的で、長期で見た場合のキャッシュフローの安定性はLMTと比較して高いと考えています。
日本ロジではキャッシュフローの安定性を重視する運用方針に基づいてポートフォリオを構築していますが、これらの特性を考慮して、LMTではない物流施設のポートフォリオに占める比率が、他の物流施設特化型REITと比べて高くなっています。2019年9月12日時点における日本ロジのLMTとLMTではない物流施設の比率は賃貸可能面積ベースで30.2%対69.8%です。
――日本ロジの投資口市場価格について意識していることはございますか。特に、過去1年他の物流投資型REIT比投資口価格が優位にある状況について思い当たることはありますか。
基本的に投資口価格は投資家が決めることであり、我々としてこうあるべきというものはありません。但し、P/NAV倍率1倍程度の投資口価格は維持したいと考えています。2017年以降、日本ロジの投資口価格はしばらくP/NAV倍率が1.0倍を下回る水準で推移していました。この状況を打開するため、投資家とのディスカッションを踏まえ、2018年に「総力戦」と銘打って、投資主価値向上に資する各種施策を実施しました。具体的には以下の3点です。
① 2度に亘る自己投資口の取得と消却
② 物件売却/入替や含み益の戦略的活用等の運用戦略の多様化
③ 運用方針の透明性向上と投資家とのコミュニケーションの深化
また、これらに加えて、2019年の資産運用会社社長交代を機に、資本コストに対する意識の強化を改めて投資家に示しました。投資口価格は足元ではP/NAV倍率がほぼ1倍の水準まで回復していますが、これら一連の施策を行ったことが投資家に評価して頂けたのではないかと思います。
――成長戦略についてお聞かせください。
日本ロジは、1口当たり分配金と1口当たりNAVの持続的・安定的成長を目標として掲げています。また、その2つの目標の中で分配金に関しては、当面の目標として1口当たり5,000円を設定しています。
分配金成長には物件取得が欠かせないため、年間の取得目標額については努力目標として200~300億円としています。一方で、物件取得にあたっては資本コストを充分に意識し、取得物件の平均NOI利回り4.5%以上を目指すといった目標を定めました。日本ロジは、目線に合う質、価格、利回り感でなければ無理に取得を行いません。従って、目線に合う適切な取得機会がないのであれば、200~300億円の年間取得目標額に届かない可能性もあると思っています。日本ロジは「投資家ファースト」の精神を社内外で謳っており、投資家利益を優先した適切なポートフォリオ運用を行っています。