シニア・ヘルスケア施設とは
表1) 介護施設の種類
表1の通り高齢者施設には5区分の13種類の施設があります。一方、日本ヘルスケア投資法人の目論見書によると、その投資対象としてのヘルスケア施設とは「高齢者施設・住宅」、「医療施設」、「研究開発施設等」に区分され、そのうちシニアに限定されるものは「高齢者施設・住宅」になり、高齢者施設等は「有料老人ホーム」、「サービス付高齢者向け住宅」及び「その他施設」に分けられます。
リートの投資対象は、運営が民間である8種類の施設のうち、分譲マンションとグループホームを除く6施設に限定され、さらに投資実績をみると、その規模と運営形態から介護付/住宅型有料老人ホームに概ね集中しています。
不動産投資にかかるリスクだけでなく、施設運営者が抱えるリスク、入居者保護と投資家保護のコンフリクト、社会保険制度の改正等のリスクがパフォーマンスに大きな影響を及ぼす可能性があるため、リート等には適さないアセットタイプと考えられていましたが、超高齢化社会における確実な人口動態から、安全確実な需要者(施設利用者)が見込まれる施設であり、成長性の高い不動産投資商品として注目され、大和証券グループをスポンサーとする日本ヘルスケア投資法人のほか、三井住友銀行をスポンサーとするリート、及び新生銀行/ケネディクス等をスポンサーとするリートも上場を予定しており、現時点では3つのヘルスケア特化型の上場リートの誕生が見込まれています。
また超高齢化社会への対応に民間資金を活用するため、日本再興戦略-JAPAN is BACK-(平成25年6月14日閣議決定)や、好循環実現のための経済対策(平成25年12月5日閣議決定)において、ヘルスケアリートの活用や上場推進が掲げられており、官民一体となって、その拡充が進められています。
こうした背景の中、日本ヘルスケア投資法人の投資口価格をみると、11月5日の上場時の公開価格15万円に対して初値で22万円、12月19日の終値では25万円と大幅躍進を遂げており、市場の期待も非常に大きいことがうかがえます。
不動産投資の観点でヘルスケア施設には、①行政、②積算価格、③運営の3つのリスクがあります。結論的には、運営者の信用力に収斂するリスクと捉えられ、その運営者の信用リスクも、運営者の代替が可能であるものとして整理されているようです。
まず①行政リスクでは、介護保険制度の改革等により運営者の収益が圧迫され、または入居者負担増に伴って入居率が低下し、入居者の賃料等が減額されるリスクです。日本の財政状況から、中長期的に現在の介護保険制度の維持が困難となれば、近い将来に当該リスクが顕在化する可能性があります。
次に②積算価格リスクです。ヘルスケア施設の入居者賃料等(入居者⇔施設運営者)は、オフィスや住宅と違って市場相場に相当に幅があります。またリートは、当該施設の運営者と長期一括の賃貸借契約(不動産所有者⇔施設運営者)を締結していますが、その賃料水準にも大きな幅があり、施設拡大を急ぐ運営者の中には、高い稼働率や一定の入替えを前提とした当該施設のみの収益で賄うギリギリの賃料設定になっている場合があり、その場合は近々に賃料が調整されるリスクがあり、こうした高い賃料の場合は積算価格と収益価格の乖離が大きく、むしろ近隣で新築した方が合理的と思われるようなケースも散見されます。
最後に③運営リスクですが、建物を一括して施設運営者に賃借しておりますので、運営者の破綻等の事態が生じた場合、賃料収入がゼロとなるだけでなく、社会的責任として高齢の入居者の保護をはかる必要性も考慮しなければならないかも知れません。リートの運用基準としては、各施設の稼働率、収支状況を常にチェックして、最悪の事態を避けるような仕組みが設けられており、収支状況が悪化した場合には事前に対策が講じられるとの説明もありますが、運用が芳しくない施設の代替運営者を探すのは困難であり、果たしてリスク回避が出来るか疑問視する声もあります。
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