ファンド組成におけるポイント
ヘルスケア施設はサイズも小さく、不動産所有者が個人の地主であることが多く、また手間を掛けずに長期安定的な賃料収入が期待出来るため、売買の対象となることが少ないため、購入物件のオリジネーションが最も重要なポイントですが、ヘルスケア施設特有のポイントとして①減価償却、②運営者、③賃貸借条件に分けて説明します。
- ① 減価償却
- ヘルスケア施設は、比較的郊外の土地値の低い地域に立地しているため、建物割合が高く、減価償却後の配当が低くなる傾向がありますが、必ずしも土地値が高い優良な立地の施設の方が、競争力のある優良な施設とは言い切れません。
また高い利回りであっても、単に賃料が高いだけの施設も多く、将来的な調整が見込まれるものも少なく無いため、個々の施設について慎重な分析が必要になります。 - ② 運営者
- 長期の一括賃貸を前提にしているため、運営者の信用力が最も重要になりますが、信用力の高い運営者の施設はそのオーナーも手放すモチベーションが低く、売買の対象になりにくいため、中堅クラスの運営者の施設がファンド組成では中心になっているようです。
また中堅の運営者は、施設数拡大のために、(無理に)競争力のある賃貸条件、すなわち高い賃料としていることが多いため、売買時等に賃料調整を迫ってくるケースも多いので、③賃貸条件の細かな取り決めで、いかに賃料減額等を防ぐことが出来るかが重要です。
加えて、施設運営者の多くは、地主の有効活用や開発事業等の不動産業と同様の業務を担っておりますので、不動産の売買、賃貸等のプロフェッショナルであることが多いため、個人所有者からファンド等のプロに所有者が変更されると、様々な交渉を持ち掛けてくる場合がありますので、留意が必要です。 - ③ 賃貸条件
- 賃貸条件で主に確認を要するポイントは、a.施設収支・決算情報の開示、b.費用負担区分、c.賃料改定の条項、d.売買の優先交渉権等になります。尚、個人が所有されている施設の多くは、貸主の意識が低いため、賃料だけ高くて、その他は借主(施設運営者)に優位な内容が多く盛り込まれていることが多く見受けられます。また一時金の取り扱いについても様々ですので、個人からファンドが購入する場合には、賃貸借契約書の全面的な改定が必要になります。
- a. 施設収支・決算情報の開示
- リートにおいては、施設収支や運営者の決済情報の開示をマストとしておりますので、今後のヘルスケア施設で流動性を確保するためには、賃貸借契約書に当該条項を織り込む必要があります。
- b. 費用負担区分
- 建物修繕費、法定点検、居室内の設備など細かく確認が必要になります。多くの施設では、Capex以外のオーナー負担は無いようですが、例えば、居室内の空調の交換(いわゆるエアコン)がオーナー負担であるなど、不用意な費用が将来的に発生する可能性があるため、賃料のみならず、費用面も慎重に調査・確認が必要になります。
- c. 賃料改定の条項示
- 原則、賃料改定は不可とし、経済情勢等の変動に伴い数年毎に見直すと規定されるケースが多いようですが、解約条項、違約金の設定と併せて、施設運営者の信用力とのバランスで決定していくことになります。まず現在の賃料が周辺相場に比して適正であるか、また施設収支からの負担力に問題が無いかなどを慎重に見極めて、改定条項についても決定していくことになります。
- d. 売買の優先交渉権等
- 売買にあたっては、様々な交渉を持ち掛けてくる施設運営者もありますが、所有者が売買することを阻害することは、原則的に賃借人(施設運営者)には出来ません。但し、ファンドが購入する場合には、賃貸借契約書を全面的に改定しなければならない場合がありますので、賃借人(施設運営者)の協力を仰ぐ意味で、協力料的な意味合いで、賃貸条件の経済的な後退を余儀なくされる場合があります。