吉原 祥子 (著)
「不動産市場の二極化」という言葉がすっかり定着しました。人口流入やインバウンドの盛り上がりといった追い風を受ける東京23区等の大都市圏では需要の高まりが不動産価格を押し上げる一方、それ以外の地方部では「空き家問題」に象徴されるように個人や家庭、さらには地方公共団体にとって不動産が財産ではなく負担と化しつつあります。
今回取り上げる『人口減少時代の土地問題 - 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ』は、二極化する不動産市場の暗部をもたらす要因として「不動産の所有者不明化」を挙げ、それがどのように生じ、不動産を社会的負担へと転換させてしまうのかを丁寧に追いかけた一冊です。
そんな本書は以下の4部構成となっています。
1.不動産所有者の生死や行方が把握できなくなってしまう「所有者不明化」という現象とそれがもたらす諸問題について。
2.不動産の「所有者不明化」が日本全体でどれだけ広く深く進行しているかを著者が東京財団で重ねてきた研究結果等をもとに明示。
3.「所有者不明化」を発生させてしまう制度的要因への考察と分析。
4.「所有者不明化」やそれがもたらす空き家問題や耕作放棄地の発生といった社会的問題の解決策の提案。
本書で紹介されているデータのうち、既に私有地の2割、九州(約370万ヘクタール)を上回る面積の不動産が所有者不明になっているという国土交通省の調査結果は実に衝撃的です。更にそうした「所有者不明」の土地が空き家問題をもたらすだけでなく、災害後の復興、効率化のための農地集積等を著しく阻害する要因になっていることには暗澹たる気持ちにならざるを得ません。
地方から東京等大都市圏に人口流入が続くということは、地方の不動産(特に住宅)需要が縮小し続けるというだけではなく、大都市圏において「地方の自分が住んでいない不動産」を相続する人が増え続けるということも意味します。自分が地方に住む父母の不動産を相続した時の振る舞いが、巡り巡って社会にどのような影響を及ぼし得るのか、不動産の「所有者不明化」が身近で深刻な問題であることがよくわかる作品です。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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