日本取引所グループ(著)
ニューヨーク証券取引所での上下に荒い株価の動きが東京をはじめ世界各地の株価を揺らし、投資家は勿論、関係当局にも緊張が走っています。こうした株式の乱気流は同じ上場商品たるJ-REITの値動きにも大きな影響を与えています。
長期的には景気の優れた先行指標でありながら、短期的には激しい値動きを見せて他の金融商品を巻き込みながら多くの人々に悲喜劇をもたらす株式。その取引が行われている証券取引所はどのようにして生まれ、現在に至っているのでしょうか。
今回取り上げるのは、そんな証券取引所、特に日本の証券取引所の歴史に焦点を当てた「日本経済の心臓 証券市場誕生!」です。
本書の著者は日本取引所グループ。日本で最大の株式取引額を誇る東京証券取引所とこれまた日本を代表するデリバティブ取引所たる大阪証券取引所を擁する、言わずと知れた日本経済の一大基盤です。
そんな著者の手による本書は大きく分けて3章、そして巻末に脚注や参考文献、関連年表を載せるという構成になっています。
まず第1章では、日本における証券取引の基礎を作り上げた江戸時代の米取引を紹介しています。デリバティブの歴史でも当時の堂島米会所が最古の事例として触れられることが多いのですが、具体的にどのような取引が行われたのか、そしてその取引によって商人や各地の藩がどのような資金調達を行ったのかまで取り上げた書籍は多くはありません。
本書では、図表も使いながら要点を押さえた記述で、現在の先物取引や国債取引にも類似した高度な取引が既に江戸時代に活発に行われていたことを具体的な取引事例・事件を交えて生き生きと描き出しています。現在もテクニカル分析で活用されている「酒田五法」を生み出した本間宗久の相場哲学の他、久留米藩の米取引を利用したえげつない不公正ファイナンスも読み応えがあります。
第2章では、時代が明治・大正に移ります。この時期、江戸時代に蓄積されたノウハウと西洋から導入した市場経済の仕組みが組み合わさり、証券取引所や商品取引所といった現在の日本に直接繋がってくる諸制度が整備され稼働していきます。
ここでは証券取引制度の整備・稼働に加え、商品取引所での取引を通じて巨額の資産を築いた「天下の糸平」こと田中平八、そして大阪株式取引所(後の大阪証券取引所)の設立に尽力し東京に押され気味であった商都大阪の再活性化に大きく貢献した五代友厚といった人物に焦点を当て、日本資本主義草創期の熱気を伝えています。
第3章が昭和です。太平洋戦争の戦禍とGHQ占領下の諸改革という大きな変動を経験しながら1980年代後半のバブル景気に至る時代でもあります。
この章の出色は、敗戦後の日本において新たな支配者となったGHQから戦時中に中断されていた証券取引所の再開許可を取得しようとする関係者の悪戦苦闘でしょう。
「絵に描いた餅」ならぬ「絵に描いた馬」を突破口としてGHQから再開許可を勝ち取った日本の証券取引所は、高度経済成長と軌を一にして取引金額、時価総額を伸ばし、やがて狂乱のバブルを迎えます。本書の記述はそこで終わりますが、バブル崩壊後の低迷とインターネットバブル、リーマン・ショック、そしてアベノミクスによる株価復活までを扱った第2弾を期待してしまう作品でした。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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