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マーケットコラム

低迷期における財務戦略の重要性/関 大介

2008-06-26

関 大介


 東証REIT指数は、時価総額の大きい日本ビルファンド投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人が堅調であるため、新年度に入り1,400ポイントから1,600ポイントのボックス圏を形成している。つまりJ-REIT市場は、全体として堅調に見える状態になっている。
 しかし個別銘柄に目を移すと、東証REIT指数が急落し、1,285.34を示した3月17日終値をも下回る銘柄が6月20日現在20銘柄も存在する。
例えば最も下落したラサールジャパン投資法人は、同期間で38.9%の下落を示す。このようにJ-REITは銘柄の選別がより激しくなっている。
 
銘柄選別を加速させている最大要因は、増資及びリファイナンスリスクである。
3月以降、クリード・オフィス投資法人やDAオフィス投資法人が、リファイナンスリスクにより1口当たり分配金を大幅に減少させていて、その懸念が他銘柄に広がっているためだ。

J-REITは、利益の全額を投資家に分配するため、一般の事業会社と異なり、借入金の返済原資は増資または物件売却に頼ることになる。
価格が低迷し増資が困難な銘柄を金融機関から見ると、貸出金の返済原資に乏しい貸出先と見える。
このような状況下で、借入金比率が高い銘柄は、借入金返済原資を確保するために低価格での増資を強行する懸念を持たざるを得ない。そのため価格が低迷し、その低迷が既存投資家のロスカット売りを誘発することになっている。

従って、価格が低迷する銘柄がリファイナンスリスクを増資以外で払拭するためには、短期借入金を長期借入金に切り替える必要がある。
この手法はアドバンス・レジデンス投資法人(ADR)が6月に実施しており、短期借入金132億円(借入金全体に占める割合は25%)を全額長期借入金に借換えしている。
この手法が特に評価できる点は、返済期限を4年から7年までと長期借入金としても比較的長めにするとともに分散している点である。
調達コストは、短期借入金より高くなり支払利息が増加するため分配金の減少要因となる。
しかし低価格の増資は、その銘柄が存続する限り影響が及ぶ点から見れば、長期借入金への借換えは妥当な財務手法であり、このような手法を取れた資産運用会社の運営能力は評価できよう(※)。

このような選択肢をとれない銘柄の場合には、売却損失が生じない程度での価格で物件売却を行い金融機関に返済できる点を示す必要があろう。
売却した物件の賃貸収益が減少するため、この手法によっても分配金の減少要素となるが、資産残高に応じた運用報酬を受け取る資産運用会社にとっても減収要因となるため、投資家と“痛み分け”ということになる。

最終的な手段は、増資となるが、この場合においても発行投資口の増加比率を極力抑え、調達資金を借入金の返済資金とするとともに、長期借入金への借換えを行う必要がある。
現在、価格低迷銘柄に市場から求められていることは、物件を取得することでなく財務基盤を健全化することであり、この点に注力した資産運用能力を発揮すべきである。


(※:ADRは全額長期借入金としているため、当面増資リスクは軽減されたと考えられる。しかし、4月22日のR&Iによる格付けレポート(AからA+に格上げ)によれば現在の有利子負債比率を恒常化させない点を評価している。恒常化がどの程度を指すのかは不明であるが、ADRは現状の有利子負債比率が高いため、今後の物件取得がある場合には増資での資金調達の可能性がある。)


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