2008-07-11
先日、産業ファンド投資法人が増資を中止しましたが、その前に、大和ハウスリート投資法人の上場中止もあり、REITといえども現下の投資環境では、市場からの資金調達が厳しくなっています。
更に、エクイティ市場だけでなくデット市場でも不動産に対する融資はタイトになっていて、昨年後半から不動産私募ファンドはデットの調達に支障を来たしていました。
それが年明けとともにREITにも飛び火して、投資口価格が低迷している銘柄の融資には金融機関が慎重になりました。
私募ファンドの場合、不動産の転売益で投資家への配当を出しますし、エクイティ償還時には保有物件を売却するのが原則ですから、昨今のように売り物件が増えて価格が下落している局面では、金融機関が融資に慎重になるのは当然です。
一方、REITは原則として資産を保有し、賃料収入で運営することを目的としていますから、不動産価格の上下とは直接関係がありません。
従って、金融機関の与信に際しては、キャッシュフローの安定性とDSCR(借入金利息支払い能力の指標)をチェックする事になります。
この基準で見ると、大半の投資法人は融資可となるはずですが、実際にはもっと厳しくなっています。
その主たる理由は、デットの元本返済に対する不安です。
投資法人の借入金返済手段は、
① 手持現金(受入敷金、減価償却費等)での返済
② 増資によって集められたエクイティによる返済
③ リファイナンス
の3種類になりますが、特に短期借入金の場合は、①ないし②が原則になります。
この視点で投資法人をフィルタリングすると、
④ 現預金比率(現預金/流動負債)が100%以下の投資法人
⑤ 投資口価格が低迷している投資法人
この2つの条件に両方とも該当する投資法人は、融資が否認される確率が高くなります。
現在の市場での投資口価格の低迷については、必ずしも投資法人だけの責任とは言えない面もありますので、⑤は一旦除いても、④は資産運用会社の財務の責任です。
よりレバレッジを利かせるために、闇雲に金利の低減を目指して短期借入金を導入しようとした安易な財務戦略の結果です。
元々、REITのような不動産賃貸事業では、財務上からは短期借入金ニーズは生じません。
唯一生じるのは、1年以内の増資によって返済する予定での導入ですが、増資というのは半年前ぐらいから準備しますので、短期借入金導入時点でおおよその増資時期を見通しておくのが普通です。
このような見通しを持たないまま、安易に短期借入金を導入し、しかも現預金比率を無視した借入を起こした投資法人は、REITとしては稚拙としか言いようがありません。
こういう投資法人が資金調達に支障を来たすのは止むを得ませんが、そうではない投資法人にも及んでいるのが今日の実態です。
これは借りる方も貸す方も、REITという仕組みの財務面での理解が進んでいない事が原因です。
また往々にして日本では、論理よりも風潮が優先されるカルチャーという事もありますが、今回のような事態を奇禍として、REITもそして不動産融資を行う金融機関にも、REITという仕組みの理解度が向上する事を期待したいと思います。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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