2008-09-18
リプラス・レジデンシャル投資法人(RRI)のオークツリー傘下ファンド(以下、オークツリー)を中心とした第三者割当増資と、それに伴う予想分配金の大幅な下方修正が公表されて1ヶ月が経過しようとしている。
増資の発行価額175,000円は増資公表時点の終値ベースでの最安値であったが、併用した公開買付価格が260,000円ということも影響して、投資口価格はオークツリーの平均取得額194,000円を超える水準で推移している。
J-REIT相場は波乱の様相を濃くしており、価格低迷銘柄においては下値の目処がつきにくい状況である。
その中で当該増資はRRIの下値に歯止めをかけている点で、短期的には前向きな評価をすることは可能である。
しかし、RRIの増資はJ-REITの投資商品としての最大の特徴を毀損していると言えよう。
J-REITの投資商品としての最大の特徴は、安定的な分配金を投資家に還元するという点である。
今年度に入り予想分配金を下方修正する銘柄が増加しているが、その要因は金融環境の悪化に伴う借換え後の金利上昇である。
当面この状況は変化しないものの、正常化すれば分配金水準は回復するであろう。
しかし、RRIの増資は投資口数の増加割合が極めて高い。従って低下した分配金は回復余地がほとんど存在しない。
再度J-REIT相場が上昇に向かったとしても、RRIの価格の上昇は想定できず、結果として低い分配金水準が継続する可能性が極めて高いと言える。
このような影響がある中で、敢えて当該増資を行う決断の背景には、深刻なリファイナンスリスクが存在したと考えることが自然であろう。
なお、当該増資は増資公表時点の投資口価格と比較すれば極端に低い訳ではなく、いわゆる時価発行増資であり是認すべきであるという考え方も成り立つ。
しかしこのような考え方は、J-REITの仕組みの特徴として利益相反が生じやすいという点を十分考慮したものとは思えない。
利益相反の具体的な事例としては、
1.スポンサーからの物件取得
2.資産運用会社の運用報酬は物件取得額に比例
というJ-REIT独特の仕組みに関わる。
新興上場会社の中には、資金調達に行き詰まる中で不可解な増資(MSCBの発行等)を行う事例もあるが、結果的には破綻することが多く、その会社自体に影響が及んでいる。
しかし、J-REITの場合は利益を得るスポンサーが外部に存在し、J-REITが破綻したとしても、その影響は限定的<font size="-1">(※)</font>である。
また株式等の投資信託は、残高比例で運用報酬が増加する仕組みであるが、運用成績が低迷すれば解約による資金流失が発生するため、結果的には運用成績次第で運用報酬が決まることになる。
しかし、J-REITの場合は、投資口価格がどんなに下落しようとも、物件保有額を増加させれば、運用報酬が増加する仕組みである。
つまりJ-REITは、どのような資金調達をしたとしても、風評の影響を別とすれば、スポンサー企業に悪影響を与えず報酬を確保できる。
このような利益相反の懸念を唯一払拭する手段が、運用規模の増加に伴い分配金を増加させることである。
この点については、投資口価格に関係なく、物件の利回りが上昇(不動産価格が下落)する中で、資産運用会社の運営次第で対応可能なはずである。
例えば、急激な金利上昇により分配金が増加しない場合でも、1口当たりNOIの増加等、資産運用会社の能力を示し、投資家に将来的な”楽しみ”を与えていくことが求められている。
また分配金の増加という点では、J-REITの仕組みに「投資口の買い入れ消却」が早急に認められるようになることを期待したい。
「買い入れ消却制度」は、転換社債などの株価上昇に伴い投資口が増加し希薄化するのとは異なり、分配金増額に直結する。
J-REITは内部留保を持たない仕組みであり、買い入れを行うには借入金に依存することになるため、超えるべきハードルは多い。
しかし投資家利益に直結する仕組みである点から、まずは制度としての解禁への動きを進めるべきであろう。
<font size="-1">※保有する投資口株価の下落により減損対象となったとしても、傘下のJ-REITに対する物件売却益で十分カバーが可能。</font>
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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