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マーケットコラム

平和不動産リート投資法人の増資と負ののれんの活用について/アイビー総研 関 大介

2015-12-25

関 大介

 平和不動産リート投資法人(証券コード8966、以下HFR)が11月27日に公表した増資と負ののれんの活用方法について記載します。


1. 平和不動産リート投資法人とは

HFRのスポンサーは、名称が示す通り平和不動産(証券コード8803)となっています。HFRのポートフォリオは、住居とオフィスを主体としホテルにも投資を行っている総合型です。


2. 増資による影響

今回の増資で53億円を調達し、住居3棟(取得額合計55億円)とオフィスビル1棟(取得額31億円)を取得する予定です。
増資前の取得額に対する借入金比率は46%程度となっていますので、今回の増資でHFRは借入金比率を低下させ、今後の物件取得余地を拡大させたことになります。
一方で、増資の発行価格は81,217円と増資前の1口当たり出資額88,082円を下回っていますので、いわゆるディスカウント増資になります。
但し、増資前の出資総額(出資剰余金を含む)837億円に対し6%程度出資額が増加する小規模な増資であるため、ディスカウント増資の悪影響は少ないものとなります。
具体的には1口当たり予想分配金は、増資前の2015年11月期が1,719円になっていますが、増資後の2016年5月期は1,764円、2016年11月期は1,788円となっています。


3. 負ののれんの活用について

このように1口当たり分配金だけを見ると、HFRは借入金比率を低減させながら増配を実現することになりますが、2016年5月期と11月期は合併により生じた負ののれんを活用し、1口当たり40円上乗せしていることには注意が必要です。
HFRは増資と同時に「負ののれんの活用方針について」を公表し、2016年5月期以降は負ののれんの残高から1口当たり40円を上乗せして投資家に分配することとしています。
HFRは2010年10月の合併後は、物件売却損失が発生した時には分配金を安定させるために負ののれんを活用していました。
今後も同様に一時的な損失などが発生した場合には、負ののれんを活用することに加え、恒常的な活用も打ち出したことになります。
この背景には、今年度の税制改正によって負ののれんを持つ投資法人は、2017年3月末までに終了する決算期までに(HFRの場合は2016年11月期が該当)負ののれんを毎期均等額以上の取崩すことが必要になったためです。
既に大和ハウス・レジデンシャル投資法人(証券コード8984)は、減価償却費の10%相当額を負ののれんを取崩して分配金に充当する方針を示していますが、HFRは税制改正を受けて方針を示した最初の銘柄となりました。
今後は、大和ハウス・レジデンシャル投資法人とHFR以外でも合併銘柄が負ののれんを活用する方針を示すことになりますので、合併銘柄は増配となる可能性が高いものと考えられます。

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