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マーケットコラム

インフラファンド市場に「漂う」懸念/アイビー総研 関 大介

2019-07-12

関 大介

今回は、前号の「高利回りで推移するインフラファンドに注目」で記載した通り、インフラファンドの価格下落要因となった2点の懸念材料について記載する。


1. 出力制御の影響

再生可能エネルギーを電力会社が決められた価格で買い取る「FIT制度(固定価格買取制度)」により収入の安定性が高いインフラファンド市場は、上場6銘柄の予想分配金利回りが5%台後半から8%を超える銘柄もあるなど、高い利回りで推移している。
この要因として、市場規模が小さいため、機関投資家の参入が難しい点が挙げられる。時価総額が市場最大のカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)でさえ7月10日時点の時価総額は230億円規模であり、売買金額は7,000万円にも満たない。
一方で上場銘柄が4銘柄となった2017年秋頃から2018年の夏頃までは、高い利回りに反応した個人投資家の投資拡大を背景に、インフラファンドの価格が上昇する局面もあった。

しかし価格上昇に九州電力が2018年10月から実施した太陽光発電所に対する出力制御が「冷や水」を浴びせることとなった。
出力制御は、原子力発電所の再稼働が進めば九州電力以外でも実施される可能性が高い。原子力発電所は、出力制御が難しい点もあり、最後に出力制御の対象となるためだ。従って他電力会社で出力制御が実施された場合には、またインフラファンドの価格が下落する局面もありそうだ。

出力制御とは、発電量が需要を超える見込みが高くなった場合に、発電所からの電力供給を遮断することをいう。電力が過剰に供給されることで、停電(ブラックアウト)を避けるために行われる。出力制御は、最初に火力発電所に適用され、他地域への広域供給を行い、さらにバイオマス発電所に適用しても発電量が需要を超過する場合に、太陽光発電所に適用されることになる。

出力制御の対象となると、当然ながら売電を行うことができなくなる。従ってインフラファンドの収入が、天候以外の要素で減少する場合が生じる。
但し、現時点でインフラファンドが保有している発電所は、出力制御が年間で最大30日までの施設になっている。従って収入に対する影響は軽微なものとなりそうだ。
例えば、九州電力管内に取得額ベースでポートフォリオの60%以上の太陽光発電所を保有するカナディアン・インフラは、2019年6月期に初めて通期で出力制御の影響を受けることとなった。通期の出力制御の影響額は3,300万円弱であり、業績予想で開示している営業収益20億円強に対し1.5%程度の影響しか生じていない。
従って、前述の通り九州電力以外の電力会社が出力制御を実施し価格が下落した場合にも、慌てて売却する必要性は少ないものと考えられる。


2. FIT制度廃止の影響

出力制御の影響が軽微であることが投資家に認識されていく中で、2019年1月以降は価格が回復基調となったインフラファンド市場であったが、6月中旬に再度急落することとなった。
その原因は、一部メディアによる「経済産業省が、FIT制度を終了する検討に入り、2020年の関連法改正を目指している」という報道だ。
但しこの点についても、カナディアン・インフラが6月13日のプレスリリースで「本投資法人が保有する太陽光発電所に適用される固定買取価格は各発電所毎に確定しており、影響はないと見ております」(※)と記載している通り、既存施設には影響を与えないと考えられる。
従ってインフラファンド市場は、スポンサー企業が保有する太陽光発電所を取得することで当面の規模拡大も可能だ。

一方で2020年以降に決定される売電方法によっては、インフラファンドの規模拡大にブレーキがかかる可能性もある。
例えば1年毎に売電価格が変動する方法が採用されるようになれば、収益変動リスクが高くなる。このような発電所をポートフォリオに組み入れることは難しくなるため、FIT制度下での発電所しかインフラファンドが取得できない事態も想定されるためだ。

従って、インフラファンド市場は、前述の通り市場規模が小さいために価格上昇が難しいという状況が続く懸念が高くなっている。
このような点から、過度な価格上昇期待を持たずに高い利回りを期待して長期保有するという投資姿勢が必要となりそうだ。



※)2019年6月13日付「再生可能エネルギーの固定価格買取制度の終了に係る一部報道について」に拠る




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