2023-05-01
投資家との緊張関係が歓迎できる理由
株式市場では、株主総会で株主提案議案が付議されることが増加し、投資家との緊張関係が増している。いわゆるアクティビストと呼ばれる投資家の動きによって、配当性向を向上させ増配となる事例も多い。
一方で、J-REIT市場は、配当性向が実質的に100%近いことや投資主総会は原則として2年に1度の開催となっている。更に賛否を明確にしない場合には議案に対し賛成したとする「みなし賛成制度」が採られているため、投資家との緊張関係は生じにくい状態となっている。
J-REIT市場でも投資家と投資法人側との緊張関係が生じる場合はあった。但し、これまでは買収(合併)などの提案が主な目的であり、投資家全体(※2)への恩恵は少ないものが多かったが、昨年からは別の緊張関係も生じている。
例えば、エスコンジャパンリート投資法人(EJR)の個人投資家1名が、資産運用会社が行政処分を受けたことで、投資法人に対して資産運用会社の責任追求を提起するよう請求を行い、22年12月に資産運用会社が666百万円の賠償金を支払うことになった。EJRは賠償金の支払を受けて23年1月16日に23年1月期の業績予想を修正し、分配金を3,201円から5,225円とした。
直近では、いちごオフィスリート投資法人(IOR)の投資家によって、資産運用報酬の変更の提案が提起されている。IORの場合は、スターアジア不動産投資法人(SAR)の投資家であり、執行役員や監督役員(※3)の増員も求めているため、将来的な合併も視野に入れている可能性もあるが、投資家側による資産運用報酬体系の変更提案は初めての事例となっている。
IOR側の投資家は3月30日に、執行役員と監督役員の増員の提案には反対意見の表明。更に4月28日には、運用報酬条件の変更(※4)等を臨時投資主総会に目的事項として追加する請求を行っている。
異なる議案が臨時投資主総会で諮られるため、前述の「みなし賛成制度」は適用されないこととなる。一方で大量保有報告書に拠ると4月14日時点で、IOR側の投資主はIORの投資口の33.5%を保有しているため、SAR側の投資主の提案が採択される可能性は低いと考えられる。
投資家に分配金を支払うための「箱」である投資法人に対し、投資家側からの提案が多くなることは、投資法人のスポンサーに対する牽制機能が増すことにもなる。従ってEJRのように分配金が大きく増加しなくても歓迎すべき動きと考えられる。
※1:本稿では価格騰落に関して26日終値ベースでの比較。
※2:合併に反対する投資家にとっては恩恵がない
※3:一般企業とは異なり、業務の大半を外部委託する投資法人では従業員を雇用せず、執行役員と監督役員(一般企業での取締役と監査役に該当)だけで投資法人が構成されている。
※4:具体的な変更の提案内容は、本稿執筆時点では開示されていないため不明。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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