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【前編】不動産金融塾第54回 「不動産の動向」
講師:参議院議員 片山 さつき 氏
著名な講師を招いて不動産金融に関する講演を開催する「不動産金融塾」。第54回目の公演では不動産証券化の生みの母たる参議院議員 片山さつき氏を招き、不動産を取り巻くさまざまな現状についてお話し頂きました。
今回の講演会は東京の汐留で、講演後に予定されている懇親会と同じ会場で開催されました。開始時間の30分ほど前から人が入りはじめ、顔見知り同士で挨拶を交わす姿も。カジュアルな雰囲気の会場と同じく、来場者も堅苦しさのない和やかな雰囲気でリラックスしており、何度もこの「不動産金融塾」に参加して慣れている方もいらっしゃるようでした。参加者は不動産業界や金融業界だけでなく、士業の方や投資家の方、大学関係者など多種多様な職種の方が見受けられ、多くの業界から強く関心を寄せられていることが分かります。何人もの方が始まる前からノートやパソコンを膝の上に用意して参加者の熱意が満ちる中、片山さつき氏の講演が始まりました。
不動産の現在の動向で片山さつき氏がまずあげたのは、「住宅需要の冷え込み」です。消費税が8%に引き上げられる直前の駆け込み需要後の反動で、着工数が現在10%減という状況は、片山さつき氏にとっても予想外の下降率でした。また、駆け込み需要後の戻りも遅い上に、日本の直面している超高齢化や少子化により住宅取得数が減少しています。その中で、住まい給付金や住宅ローン控除の拡充という対策は現在既になされていますが、それでもなお下降している現状を鑑みると、より思い切った改革が必要となるでしょう。今こそ全力で住宅関係に取り組まないと、再び90年代の終わりのようにその後の回復が非常に難しい状況に陥ることが予想できるからです。
片山さつき氏は住宅関係とGDPに密接な関係にあると考えており、GDP600兆円を目指す現政権は今ここで大々的に住宅問題について手を打つべき局面ではないかと主張していました。住宅取得数の減少により、空き家問題やマンション不況は確かに深刻です。しかし一方で、宅建業法の改正によってリアルエステ―トビジネスは盛り上がりの兆しを見せています。不動産業を土木や建設の一部ではなく、金融業や資産運用業として扱える分野であり、さらに今最も注目されている地方創生の要である「コンパクトシティ」の中心に入っていくべきだという活発な動きも生まれています。例えば富山県で成功しているように地方のコミュニティと身近であり、住民や街の気質にも詳しい不動産業界が公的機関と組んで地方創生を推進していくことが地域活性になり、大きなビジネスチャンスにもなると考えられます。