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【後編】不動産金融塾第54回 「不動産の動向」
講師:参議院議員 片山 さつき 氏
加えて、地方へのリアルエステートビジネスの介入は空き家対策の一つにもなりえます。
東京の都心以外は人口密度が低くなっている今、空き家の問題は無視できないものになっています。片山さつき氏は講演の中で、空き家対策の一つとして、地方都市の古い町並みとして文化財に指定されているような空き家は新しいスキームをもって再利用できるのではないか、との興味深い考えを述べました。2020年のオリンピックや2019年のラグビーワールドカップで海外から訪れる選手たちに、それらの空き家で滞在してもらうことができれば経済効果が期待できるでしょう。さらに、日本独特の家屋を体験してもらう意味でも、日本側だけでなく海外の人にとっても価値のあることになりえます。このような形での海外からの滞在者に向けたコンパクトシティづくりと運営を視野にいれるべき時期に日本も来ているのです。
また、コンパクトシティ作りは、基準が整えられまだまだ拡充の余地があるヘルスケアリートにも新たな局面をもたらします。Jリートの改正がなされ、税制度の優遇措置が続く基盤が整ってきた今、微増ながら不動産証券化は促進しています。その中で注目が続くヘルスケアリートは、日本の少子高齢化と深く結びついていることは明白です。人口がピークを迎える2030年には、現在の比率のままで言うと900万人が要介護、830万人が認知症となり、さらに3歳以下の子供が300万人、身体障害者の方が390万人とすると約2,000万人以上が災害の際に自分だけで避難できないという状況になります。これは日本という国にとって非常に危機的な事実です。そこで、革新を続ける技術を用いて医師に頼らず自分たちで健康管理や日々のヘルスケアチェックを充実させ、さらに健康管理システムがビルトインされた住宅やコミュニティ、ひいてはコンパクトシティを作りあげることが非常に重要だと片山さつき氏は提唱します。近い将来に訪れる少子超高齢化ゆえの危機を乗り越えるための取り組みをコンセプトとした施設をヘルスケアリートにすることは、リート市場にとって非常に有用であるとお話しされました。
片山さつき氏のお話は、一時間の講演の中でリートの今後や不動産動向のみにとどまらず、日本が直面している高齢化問題や中古住宅問題、災害問題などを関連付けて幅広く取り上げ、そしてそれらに対する政策や建築建設業の在り方にも及びました。多様な問題に触れて頂いたため、参加した様々な職業の方一人一人が、各々の仕事や経験に照らし合わせながら聴講できたようでした。講演の最後に設けられた質疑応答の時間には何人もの方が手を挙げ、質問や自分なりの問題提起を強い熱意をもって述べておりました。講演後の懇親会でも参加者の方の熱は続き、一人一人の質問にしっかり応えていた片山さつき氏は印象的でした。
また、参加者同士でもワインやビール、出された食事などをテーブルに持ち寄り、業界の話や普段合わない異業種の方と楽しく話されていて、盛況のうちに終了となりました。