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2018年02月14日

「REITキーマンに聞く!」 みずほリートマネジメント株式会社 橋本 幸治氏

今回は、みずほリートマネジメント株式会社 橋本 幸治氏に業界動向やファンドの特徴に関してインタビュー形式でお話していただきました。

みずほリートマネジメント株式会社 橋本 幸治氏

――オフィスビルについては、今後の大量供給に対する懸念も浮上していますが、 首都圏のオフィス賃貸市場の動向に関してどのような見通しをお持ちでしょうか。

現在の東京都心部のオフィスビル市況は、空室率の低下傾向と賃料の緩やかな上昇傾向を背景に良好な状態です。 よく話題に上がるオフィス大量供給については、好調な企業業績を背景に2018年竣工予定のビルの内定率が高いことから、市況を崩すほどのインパクトは持たないのではないでしょうか。
過去の大量供給の例を振り返りますと、2006年にも2018年と同程度の大量供給がありましたが、好景気に支えられて空室率はむしろ低下し、賃料も上昇しています。
次に大量供給があった2012年は震災直後ということもあり、東京地区全体としてみると空室率は上昇し、賃料も下落しました。しかし、もう少し細かく規模別にみると、賃料の伸び悩み・下落は全クラスのビルで共通ですが、空室率は大量供給されたAクラスビルだけで上昇し、Bクラス・CクラスといったOneリートの投資対象である中小型規模のオフィスビルの空室率ではむしろ低下していたという面白いデータもあります。
こうした過去の事例や現在の堅調な経済・金融環境、また大規模オフィスビルとは対照的に中小型規模のオフィスビルの供給は限定的であることから、我々はオフィス大量供給をあまり深刻視はしていません。

――景気後退期ならともかく、経済環境ひいては企業の需要が強ければオフィスビルが大量供給されてもネガティブなインパクトは大きくないということですね。

そうですね。現在は大企業が積極的に人を増やしていること、或いは分散していた拠点やその人員を統合して業務の効率化を図ろうという動きを活発化させていることが、東京圏のオフィスビル、特に大規模オフィスビルの追い風になっている印象です。

――地方圏のオフィスについてはどのようにお考えでしょうか。

地方については中核都市を中心に景気が持ち直している一方で、オフィスビル供給量が全クラスで限定的であり、市況は良好です。オフィス開発用地を取得しようとしても、分譲マンションや訪日観光客の増加を背景としたホテル、商業施設との競合が発生している点が特徴的です。

――資金調達の話に移ります。金融機関の貸出姿勢など「借入」を取り巻く環境に変化はありますでしょうか。

金融機関は依然として積極的な貸出姿勢と認識しています。与信を絞るような動きは今のところ見受けられません。これは2017年12月の日銀短観「金融機関の貸出態度判断」を見てもそうした傾向が顕著です。
金融機関サイドにも「不動産価格は高値圏にある」という認識はあるようですが、堅調なオフィス賃貸市場を背景に今後も安定的なキャッシュフロー が見込めることから、引き続き積極的な貸出姿勢が維持されるのではないでしょうか。

みずほリートマネジメント株式会社 橋本 幸治氏

――かつてのファンド・バブル期にはLTVが90%程度となるようなファンドも見受けられたように積極的なファンド向け貸出が行われていましたが、その時と比べると現在の金融機関の「積極さ」はどのように映りますでしょうか。

先ほどは積極的な貸出姿勢と申し上げたのですが、ファンド・バブル期に比べれば抑制的といえます。やはり2007年頃と比べると、LTV水準や貸出対象に対する適正価格へのチェックなどは金融機関の中でより厳格になっているように思います。
また借り手の投資家サイドに目を転じても、レバレッジをきかせて高額物件を取得し転売するという投資行動は鳴りを潜め、海外のソブリンファンドや年金基金等が長期保有による賃貸収益の獲得を目的として限定的なLTVで物件を取得するというのが主流となってきており、こちらも堅実さが目立ちます。
ですから、現在の貸出姿勢の積極化は、往時に比べると「規律ある、冷静な積極化」が特徴と言えるかもしれません。

――金利動向はいかがでしょうか。

金利については、当面は日銀の金融緩和継続を背景に低金利環境が続くと思われる一方で、長期的には金利上昇の可能性を排除するわけにはいきませんから、引き続きその動向を注視しています。

――直近のリート投資家の動向についてお話ください。特に個人投資家についてはいかがでしょうか。

昨年はTOPIX等と比べ東証REIT指数は軟調でしたが、2017年11月の1600ポイント近辺を底に回復基調に転じてきました。もともと各リートの賃料収入が堅調であることに加え、これまでの下げを主導してきた毎月分配型投信からの資金流出が落ち着きつつあること、平均で4%を超える配当利回りに妙味があると考えている投資家の方も増えているという印象でして、2018年は堅調な展開が期待できるのではないでしょうか。
またNISAや積立NISAの普及に伴って、NISAのような長期投資と親和性の高いリートに個人投資家の注目がより集まってくることを期待したいですね。

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