FISCO REIT REPORT
5. 今後の外部成長戦略の着目点
ザイマックス・リート投資法人では上述の現状を踏まえて、アセットタイプ別に次のような戦略を立てている。テナントニーズの旺盛さを、不動産の収益性を見極める重要な要素と考えて、アセットタイプごとに以下のポイントを総合的に判断することで、収益性の高いポートフォリオの構築を目指している。そして、今後もポートフォリオの80%以上をオフィス・商業施設・ホテルで構成する計画である。
まず、オフィスは、テナント訴求力の強い不動産に着目する。具体的には、引き続き都心8区、名古屋中心部、大阪中心部、福岡中心部に所在し、最寄駅からおおむね徒歩5分圏内の駅近で、1坪当たりの賃料単価1~2万円台の、テナントニーズが豊富な物件を取得する方針だ。
次に、商業施設は、テナント賃料の安定性または物件価格の安さに着目する。施設売上やテナントの賃料負担率が分析可能な物件や、市場対比で割安な物件を取得する計画である。
そして、ホテルは、交通結節点に所在する宿泊特化型ホテルに着目する方針だ。宿泊特化型ホテルは、スポンサーの運営ノウハウに基づき分析可能である。交通結節点へのアクセスが良好なエリアや訪日外国人の増加が見込まれるエリアなど旺盛な宿泊需要が見込まれるエリアに所在する物件を取得する計画だ。ただ、当面は、ホテル宿泊需要の回復を注視する方針である。
同投資法人では、上述のアセットタイプ別着目点を堅持し、ポートフォリオ戦略に則って、今後の物件の取得検討をしている。そして、分配金成長と財務健全性のバランスを意識し、対象物件の根源的な価値を見極める取得活動を継続する方針である。物件取得に際しては、スポンサーネットワークを通じて捕捉した豊富な物件情報から、優良物件を厳選して資産運用会社において精査し、新たなパイプラインの積み上げを目指す。また、同投資法人は LTV水準が低いことから、投資口価格の動向も踏まえて、借入金による機動的な物件取得も選択可能である。現在、都心8区に立地するオフィス(開発予定)1件、地方中核都市に立地する商業施設(開発予定)1件とホテル(宿泊特化型)1件の取得を検討している。検討中のオフィスはザイマックスグループCRE営業先企業の建替ニーズがある物件で、駅前好立地でテナント需要が多く見込まれる。商業施設もザイマックスグループCRE営業先の出店意欲が高い立地の開発案件である。また、ホテルはザイマックスグループ私募ファンドからの情報で、地域経済の拠点で観光資源も豊富な都市に所在し、底堅い宿泊需要が存在する。同投資法人では、2022年8月31日時点で10,476百万円の物件含み益を有しており、資産入替等による投資家への含み益の還元も資産戦略の1つとして検討する考えだ。
6. ESGへの取り組み
同投資法人は、ESGにも熱心に取り組んでいる。ESGに関して組織的・体系的に取り組むことを目的に、同投資法人及び資産運用会社でESG方針・関連ポリシーの制定やESG推進体制の構築、従業員研修を実施した。不動産セクターのESG配慮を測る年次のベンチマークであるGRESB評価に2022年度より参加し、リアルエステイト評価では「3スター」及び「グリーンスター」を、開示評価では「Aレベル」を獲得した。今後も、ESGへの取り組みを継続する考えだ。
Environment(環境)の分野では、同投資法人の保有物件のうち8物件がCASBEE((一財)建築環境・省エネルギー機構が認証する環境性能評価ツール)、3物件がBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の認証を取得している。2022年8月期に新たに環境認証を取得した3物件については、CASBEEの2件(ザイマックス木場公園ビルライフ川崎御幸店)、ではSランク、BELSの1件(ザイマックス札幌大通ビル)では4スターの高評価を得ており、取得率(延床面積ベース)も52.5%と高い。また、環境負荷低減への取り組みとして、2022年2月期にはオフィス8物件で再生可能エネルギー100%電力への切替が完了している。さらに、空調更新工事、共用部・専用部のLED更新工事、水力発電タイプの自動水栓の導入など、建物・設備改修による環境パフォーマンスの向上を実施している。今後も環境負荷低減に向けた取り組みを推進する計画だ。
Social(社会)の分野では、テナント・地域社会への取り組みとして、エレベーター非常用収納ボックスの設置や災害救援ベンダーの導入、感染症対策の実施などを実践している。持続可能な社会への取り組みとして、ザイマックス不動産投資顧問による21世紀金融行動原則への署名を実施している。また、スポンサーグループでは、「からくさ不動産塾」を通じた不動産ビジネス人材の育成にも取り組んでいる。
Governance(ガバナンス)の分野では、ザイマックス不動産投資顧問において、投資家利益に重大な影響がある事項について外部委員が参加する委員会を経る意思決定フローとし、投資主の利益保護を図るほか、同社でのコンプライアンス教育、スポンサーによる同投資法人への出資(スポンサーが同投資法人の投資口を保有することで投資家と利害を一致させ、投資主価値の向上を実現する)などを実践している。
近年、欧州や米国を中心に、ESGの観点から企業を分析して投資をするESG投資が増えている。世界のESG投資残高は2014年の18.2兆米ドルから2020年には35.3兆米ドルに拡大した。わが国においてESG投資は欧米に遅れていたが、2020年には残高2.8兆米ドル、世界シェア8.1%に急拡大している。世界的なESG投資拡大の潮流のなかで、日本でも成長余地が大きいと言えるであろう。その意味でも、積極的にESGに取り組む同投資法人が注目される。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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