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ヘルスケアREITについて (3/3)
オペレータを含むプレーヤーの動向 等
ヘルスケア施設でのプレーヤーは、①施設運営者、②建設会社/開発業者、③投資家に分けられます。
- ① 施設運営者
- 施設の運営者の動向は様々ですが、主に中堅クラスが一定規模を確保するために、急激な拡大を図っており、非常に積極的な活動をしています。ヘルスケア施設は、開業から1~1.5年程度は収益に貢献しないため、開発期間と合わせると3年程度は資金が滞るため、自社での開発や建設協力金の提供を極力抑えて、ファンド活用に期待を寄せる運営者が多い状況です。
一方、開発を積極的に取り組むファンドは少なく、一部には需要とのミスマッチが発生しているようです。 - ② 投資家
- 開発後の完成物件への投資家は、個人、事業会社をはじめ、リート等のプロ投資家など様々です。いずれも数少ない売り物件を奪い合う状態が続いており、先般の日本ヘルスケア投資法人の投資口価格の推移などをみて、より積極果敢な価格設定での売買が行われています。
- ③ 建設会社/開発業者
- 地主の土地の有効活用を発端としている例が多く、ハウスメーカーを中心に開発が進んでいます。一方、特定施設の認可が必ずしも大手だけでなく、地元企業に枠を与える地方公共団体もあるため、地元の工務店などでも有料老人ホーム開発を手掛けていることが多くあります。
但し、地元工務店などは開発期間の資金ニーズが強く、また優良な施設運営者とのコネクションが無いことから、開発中のファンド資金の活用に期待している業者も多くあるようです。
今後に向けた問題点と展望 等
過去に様々なアセットクラス(ホテル、ゴルフ場等)が投資対象として広がっていった過程をみると、各プレーヤーが同一の目線(投資基準等)をもつことが最も重要な課題であろうと考えられます。ヘルスケア施設では、収支情報の開示について、未だに非協力的な施設運営者がいたり、また賃貸借契約に賃借人の不合理な権利を織り込んでいたりする事例も散見され、リート購入時に相当な手間と交渉を要する場合が少なくありません。
また施設賃料の適正相場についても、必ずしも的確な分析が出来ている訳では無い点も課題と言えます。ホテルと同様に、施設によって利用者の負担に大きな幅がある上に、所有者と施設運営者との間の賃料についても、開発時の個別性が強く、一時金とのバランスも含めて、適正な賃料査定方法が定着していけば、投資家の層も拡大し、市場はより拡大していくであろうと考えられます。
一方、ヘルスケア施設特化型のリートが他のリートと決定的に異なるのは、立地と価格です。今後も東京都内の物件がヘルスケアリートに入るのは稀で、駅距離を含めて不動産としての立地は必ずしも優れたものでは無いものでも、ヘルスケア施設特化型のリートの投資対象になっています。また価格も数億円の小さな物件でも対象となっており、個人の方が保有されている物件も、リートの投資対象になっています。
日本ヘルスケア投資法人の投資口価格から推定される不動産のキャップレートは住宅系リートに迫るものとなっておりますので、特に立地の劣るエリアでは圧倒的な価格競争力をもって、今後も拡大を続けていくことは間違いありません。