１．REIT全体市況

9月末の東証REIT指数（配当なし）は、前月比-1.79%の下落。米国の株高や円安、国内の政局の行方や景気拡大期待から、TOPIXが2年ぶり高値を付ける等、株式相場は好調に推移した。
対照的に、東証REIT指数は、欧米中央銀行の緩和縮小の動きから長期金利の上昇リスクを懸念し、月初から下落基調となった。月中に小幅ながら5日連続上昇する等反発する場面もあったが、月末は9月期決算銘柄の分配金権利落ちも重なり、28日終値は1,648.92ポイントと2ヶ月半ぶりに1,650ポイントを割り込んだ。
2017年第3四半期は、6月～7月の乱高下を経て、8月前半は1,700ポイントを挟んだレンジ、8月後半は1,680～1,700ポイントのレンジで推移したが、9月は1,650～1,680ポイントのレンジと、徐々に下値を切り下げる展開となっている。一方、投資口価格の下落に伴い、REIT全体の分配金利回りは4.16%に上昇した。分配金利回りの水準から見れば割安感が見られるものの、反転のきっかけを掴めず、下落に歯止めが掛からない状況となっている。
東証が発表する投資部門別売買動向によれば、投資信託が4月から9月まで6ヶ月連続の売越しとなり、指数の下落を牽引する主体となっている。一方、売買シェアの43%を占める外国人が買越しに転じ、個人や金融機関も売越し額が減少している点から見て、投資信託の売買動向が好転すれば底打ちする可能性も指摘できる。
個別銘柄の価格では、用途に関係なく相対的に分配金利回りの高い銘柄を物色する動きが見られる。同一用途の銘柄の中では相対的に利回りの高いMCUBS MidCity投資法人、マリモ地方創生リート投資法人、スターツプロシード投資法人はいずれも前月比3%超の上昇率であった。投資口価格の回復が見込めない環境下で、投資家は分配金利回りを意識した投資手法にシフトしている。一方、増資を公表した日本ロジスティクスファンド投資法人やイオンリート投資法人、9月期決算銘柄の森トラスト総合リート投資法人やジャパンリアルエステイト投資法人が前月比5%超の下落率となった。

個別銘柄の運用状況では、14日に三菱地所物流リート投資法人が上場。初値274,000円とIPO発行価格260,000円を5.4%上回った。
既存銘柄では、日本ロジスティクスファンド投資法人、イオンリート投資法人、インヴィンシブル投資法人が公募増資を発表。イオンリートとインヴィンシブルはともに2期連続の公募増資となり、投資口市況に関係なく外部成長路線を続ける姿勢。
日本ロジスティクスファンド投資法人は2年ぶりの公募増資となった。日本ロジスティクスファンドは、これまで不動産の取得が厳しい環境では外部成長を行わず資産規模2,100億円を維持する一方、自ら再開発による内部成長を主軸に収益を拡大していた。しかし2017年に入り外部成長に軸足を移し、横浜町田物流センター等大型物件の取得によって資産規模は2,680億円に急拡大した。増資を行うも鑑定LTVは30.9％から34.9％まで上昇する等、従来の保守的な運用から積極的な運用に転換を図る。

また、ユナイテッド・アーバン投資法人、日本リート投資法人、Oneリート投資法人、野村不動産マスターファンド投資法人、スターツプロシード投資法人等、多くの銘柄で保有資産の売却が発表された。不動産価格の高い時期に、築年数の経過等課題を持つ物件の売却を進め、ポートフォリオの質を高める意向。なかでもOneリートは旗艦物件であるJタワーを売却。同時に3物件を取得しポートフォリオを分散するとともに、売却益724百万円計上により分配金が一時的に増加する。2015年にスポンサーがみずほ信託銀行に交代以降、増資や投資口分割を行う等、積極的な運用を指向している。当該売却発表後、Oneリートの投資口価格が月末までに6.4％上昇している点から、投資家より高い評価が得られたと言えよう。

＜市況データ＞

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2015年10月～2017年9月の24ヶ月間） 




2．個別銘柄データ

予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する