１．REIT全体市況

7月の東証REIT指数は、前月比+0.45%の小幅上昇。月前半は、米国が利上げを急がないとの見方が強まり、前月後半の上昇の流れを引き継ぎ、コロナショック後高値を連日更新。13日は取引時間中に2,200ポイントを超える場面もあった。月後半はデルタ株の感染拡大により4回目の緊急事態宣言が発令され、株式相場が急落すると、東証REIT指数も下落に転じたが、月末は株式相場の反発を背景に再び2,180ポイントを超える等、株式相場に比べると総じて堅調な推移となった。
これで月間ベースでは昨年11月以来9ヶ月の連続の上昇。7月は小幅な上昇であったが、2,150～2,200ポイントの高値圏で安定的に推移している。
一方、投資口価格の上昇に伴い、REIT全体の平均分配金利回りは一時3.28%まで低下。2016年5月以来約5年ぶりの低い水準で推移しており、過去の利回り水準から見れば高値警戒感が指摘できよう。オフィス市況の底入れが未だ見えない点や、米国の利上げ観測も浮上している点から見れば、一段の上昇は限定的と考えられる。
東証の投資部門別売買動向によれば、7月は外国人投資家が314億円の買越しとなった。米国の金利低下を背景にREITに資金が流入しており、外国人投資家は2月以来6ヶ月間買越しが続いている。外国人投資家の投資口売買シェアは43%と高く、REIT相場に与える影響が大きいことから、外国人投資家の動きを左右する米国の金利政策が注目される。

個別銘柄では、CREロジスティクスファンド投資法人が前月比+10.83%、SOSiLA物流リート投資法人が+9.14%の上昇と、前月に引き続き、コロナ禍の影響を受けにくい物流施設銘柄の上昇が顕著であった。
一方、いちごホテルリート投資法人が前月比-5.69%、アクティビア・プロパティーズ投資法人が-5.42%、日本都市ファンド投資法人が-4.90%と、コロナ禍の影響を受けやすいホテル系や商業施設系銘柄、また分配金権利確定の動きから7月期決算銘柄の下落率が大きくなった。

個別銘柄の運用動向では、エスコンジャパンリート投資法人（EJR）とサムティ・レジデンシャル投資法人（SRI）が公募増資を発表した。EJRは投資口数が24%増、SRIは20%増（第三者割当増資を含む）とともに増加率が大きいが、投資口価格が上昇した好機を活かし、スポンサーから物件を取得し、資産規模を拡大するとともに、1口当たり利益の成長を実現する。

インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人（IOJ）を巡る投資口公開買付（TOB）は、スポンサーであるインベスコグループによるTOBが成立した。今後インベスコグループはIOJの投資口全てを取得し、IOJは上場廃止となる見込み。従来のJ-REITにおける上場廃止は、REIT間の合併を目的とするものであったが、私募化するための上場廃止は初めてとなる。

オフィス市況の低迷が長期化するなか、REITの保有物件にも影響が出ており、特に大規模のオフィスビルで大企業のテナントが一括退去する事例が増加している。アクティビア・プロパティーズ投資法人の汐留ビルディングはNTTコミュニケーションズが2022年6月に退去、ユナイテッド・アーバン投資法人の川崎東芝ビルは東芝デバイス&ストレージが2023年10月に退去、また大和証券オフィス投資法人の新宿マインズタワーは2022年5月期の稼働率が87.4%へ低下する見込み。緊急事態宣言が頻発し大企業を中心にリモートワークが日常化する状況は、オフィス市況に従来の景気後退局面とは異なる影響をもたらしている。

  ＜市況データ＞

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2019年8月～2021年7月の24ヶ月間） 





2．個別銘柄データ

---------------------------------------------------------------------------------------------

予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する