J-REIT市況月次レポート

J-REIT市況月次レポート　2016年8月

１．REIT全体市況

8月の東証REIT指数（配当なし）は、前月比-2.45%の下落。7月は日銀の追加緩和期待を受け堅調に推移したが、7月末のREIT買入れ増額が見送られたことや、追加緩和の後退観測を背景に長期金利が上昇したことから、月初より大幅下落し、7月より一段低い1,810～1,850ポイントの水準で推移した。1月末のマイナス金利導入後好調に推移していた東証REIT指数は、金融政策を巡り不透明感が出ている。
8月の日銀の買入れ額は計5回の60億円。年間900億円の買入れ枠に対し、8ヶ月間で612億円と計画通りの購入ペースとなっている。
個別銘柄の投資口価格を見ると、いちごホテルリート投資法人が前月比-15%の下落。昨年11月上場後、変動賃料の増加を背景に急上昇したが、客室単価の上昇に伴い3月以降稼働率が低下していることや、8月に大型増資を行ったこと等から、6月以降3ヶ月連続の下落となった。
また産業ファンド投資法人（IIF）と福岡リート投資法人（FRC）がともに前月比-12%の下落。IIFは「IIF東雲R&Dセンター」の一括貸しテナントの9月退去後の方針が未だ決定しないこと、FRCは「イオン原ショッピングセンター」の減損損失計上により減配予想を開示したことが要因と見られる。

新規上場の動きでは、2日に三井不動産ロジスティクスパーク投資法人（MFLP）、31日に大江戸温泉リート投資法人が上場した。4月以降の上場銘柄を見ると、MFLP以外は初値がIPO発行価格を下回る公募割れの状況となっている。マイナス金利による影響が一巡したと見る外国人投資家が5月以降売りに転じたことや、相次ぐ上場や既存銘柄の増資により投資口の需給が懸念材料となるなか、MFLPは、REITの運用実績を持つ三井不動産の信用力が評価されたと見られる。
既存銘柄では、オリックス不動産投資法人、GLP投資法人、SIA不動産投資法人の3銘柄が公募増資を発表した。投資口市況に弱含みが見られるものの、マイナス金利導入後の金利低下による好調な資金調達環境を支えに、物件取得が進む。但し、投資口の供給過剰感から、第三者割当増資が行われない又は想定した口数を割り込む事例が増加している。予定した調達額が得られない結果、有利子負債比率が想定を上回り、運用への影響も指摘できよう。
現在のREITが抱える最大の課題として、郊外型商業施設の運用リスクが挙げられる。福岡リート投資法人が「イオン原ショッピングセンター」売却に伴い減損損失16億円を計上、日本リテールファンド投資法人は「岸和田カンカンベイサイドモール」売却に伴い売却損53億円を計上する。両投資法人の場合は他の物件の売却益計上によって分配金への影響は軽微であるが、同様の理由で無償減資を行う投資法人の事例もあったことから、収益への影響も軽視できない。更に森トラスト総合リート投資法人の「イトーヨーカドー新浦安店」の退去予定等、今後もGMS撤退の流れが続くと予想される。郊外型商業施設における契約期間やテナントの業態、売上げ状況等、慎重な精査が問われる。

＜市況データ＞

	2016年8月末現在	（前月末比）
東証REIT指数（配当なし）	1,823.54	-45.78
東証REIT指数（配当込み）	3,325.60	-68.41
時価総額合計	11兆3,411億円	-4,708億円
平均分配金利回り（時価総額による加重平均）	3.54%	+0.14

（※8982、3263は2016/8/29上場廃止のため、上記に含まれていない）

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2014年9月～2016年8月の24ヶ月間）

2．個別銘柄データ

証券コード	投資法人名	投資口価格（円）	騰落率（1ヶ月）	予想分配金利回り	時価総額（百万円）	時価総額シェア
8951	日本ビルファンド投資法人	633,000	0.48%	2.73%	893,796	7.88%
8952	ジャパンリアルエステイト投資法人	608,000	-1.78%	2.73%	796,060	7.02%
8953	日本リテールファンド投資法人	232,300	-7.82%	3.66%	592,876	5.23%
8954	オリックス不動産投資法人	180,900	-4.03%	3.25%	438,017	3.86%
8955	日本プライムリアルティ投資法人	457,500	1.55%	3.06%	399,398	3.52%
8956	プレミア投資法人	140,300	0.14%	3.49%	184,774	1.63%
8957	東急リアル・エステート投資法人	141,800	-3.01%	3.71%	138,624	1.22%
8958	グローバル・ワン不動産投資法人	394,000	-3.19%	3.55%	76,357	0.67%
8960	ユナイテッド・アーバン投資法人	184,300	-3.66%	3.32%	544,242	4.80%
8961	森トラスト総合リート投資法人	182,800	-3.64%	3.89%	241,296	2.13%
8963	インヴィンシブル投資法人	66,500	-3.62%	4.80%	244,442	2.16%
8964	フロンティア不動産投資法人	506,000	-7.66%	3.75%	250,976	2.21%
8966	平和不動産リート投資法人	85,600	-0.93%	4.33%	86,871	0.77%
8967	日本ロジスティクスファンド投資法人	235,900	-1.50%	3.42%	207,592	1.83%
8968	福岡リート投資法人	186,100	-12.22%	3.62%	139,017	1.23%
8972	ケネディクス・オフィス投資法人	624,000	-2.50%	3.50%	252,648	2.23%
8973	積水ハウス・SI レジデンシャル投資法人	119,600	-5.53%	3.56%	121,766	1.07%
8975	いちごオフィスリート投資法人	77,100	-3.75%	4.92%	118,139	1.04%
8976	大和証券オフィス投資法人	619,000	1.31%	3.41%	307,457	2.71%
8977	阪急リート投資法人	141,600	-0.07%	3.70%	84,606	0.75%
8979	スターツプロシード投資法人	168,800	-3.71%	4.88%	29,334	0.26%
8984	大和ハウスリート投資法人	291,800	1.46%	3.14%	218,191	1.92%
8985	ジャパン・ホテル・リート投資法人	88,900	3.13%	3.78%	334,434	2.95%
8986	日本賃貸住宅投資法人	82,100	-6.39%	4.14%	134,649	1.19%
8987	ジャパンエクセレント投資法人	139,400	-3.86%	3.72%	182,015	1.60%
3226	日本アコモデーションファンド投資法人	443,000	-5.34%	3.55%	214,643	1.89%
3227	MCUBS MidCity投資法人	348,500	-6.57%	4.16%	92,710	0.82%
3234	森ヒルズリート投資法人	156,500	-2.49%	3.28%	273,975	2.42%
3249	産業ファンド投資法人	516,000	-12.39%	3.72%	181,923	1.60%
3269	アドバンス・レジデンス投資法人	276,000	-3.02%	3.52%	358,800	3.16%
3278	ケネディクス・レジデンシャル投資法人	285,200	2.33%	4.33%	99,560	0.88%
3279	アクティビア・プロパティーズ投資法人	528,000	-1.31%	3.34%	316,617	2.79%
3281	ＧＬＰ投資法人	128,400	-1.38%	3.70%	333,042	2.94%
3282	コンフォリア・レジデンシャル投資法人	238,200	-2.46%	3.59%	122,317	1.08%
3283	日本プロロジスリート投資法人	248,300	-2.51%	3.33%	457,356	4.03%
3287	星野リゾート・リート投資法人	1,233,000	-1.75%	3.64%	100,806	0.89%
3290	ＳＩＡ不動産投資法人	398,000	-7.44%	5.50%	29,890	0.26%
3292	イオンリート投資法人	128,700	-0.62%	4.53%	168,528	1.49%
3295	ヒューリックリート投資法人	182,400	0.66%	3.36%	174,557	1.54%
3296	日本リート投資法人	256,400	-5.18%	5.78%	100,447	0.89%
3298	インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人	93,300	-0.96%	5.57%	76,091	0.67%
3308	日本ヘルスケア投資法人	178,000	-5.57%	4.56%	13,284	0.12%
3451	トーセイ・リート投資法人	112,500	-4.82%	5.74%	18,113	0.16%
3309	積水ハウス・リート投資法人	145,900	0.27%	3.54%	130,435	1.15%
3453	ケネディクス商業リート投資法人	258,600	-7.68%	4.55%	109,246	0.96%
3455	ヘルスケア＆メディカル投資法人	107,000	-0.65%	4.41%	12,894	0.11%
3459	サムティ・レジデンシャル投資法人	81,700	-6.31%	6.40%	23,121	0.20%
3460	ジャパン・シニアリビング投資法人	148,800	-2.87%	4.71%	12,611	0.11%
3462	野村不動産マスターファンド投資法人	170,700	0.59%	3.41%	635,347	5.60%
3463	いちごホテルリート投資法人	131,000	-15.21%	4.22%	33,313	0.29%
3466	ラサールロジポート投資法人	104,800	-1.78%	4.50%	115,280	1.02%
3468	スターアジア不動産投資法人	88,400	0.57%	6.89%	30,471	0.27%
3470	マリモ地方創生リート投資法人	91,200	11.90%	4.21%	8,254	0.07%
3471	三井不動産ロジスティクスパーク投資法人	290,900	-	3.37%	65,162	0.57%
3472	大江戸温泉リート投資法人	83,600	-	3.68%	14,730	0.13%

8982	トップリート投資法人	440,000		2.70%	77,440
3263	大和ハウスリート投資法人（旧）	640,000		2.81%	224,448

（※8982、3263は2016/8/29上場廃止のため、2016/8/26終値で算出）

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予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する

※GLP投資法人（3281）、日本プロロジスリート投資法人（3283）、日本ヘルスケア投資法人（3308）、サムティ・レジデンシャル投資法人（3459）、ケネディクス商業リート投資法人（3453）、野村不動産マスターファンド投資法人（3462）、ラサールロジポート投資法人（3466）、マリモ地方創生リート投資法人（3470）、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人（3471）は、利益超過分配金を分配金に含めて算出する

バックナンバー

※2013年11月以前のバックナンバー（PDF）はこちら

1	新宿三井ビルディング	1,700億円
2	飯田橋グラン・ブルーム	1,389億円
3	六本木ヒルズ森タワー	1,154億円
4	汐留ビルディング	1,069億円
5	東京汐留ビルディング	825億円

1	日本プロロジス	+1.86%
2	大和ハウスリート	+1.82%
3	CREロジ	+1.77%

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