１．REIT全体市況

9月の東証REIT指数（配当なし）は、前月比-1.73%の下落。月前半のTOPIXが上昇したのと対照的に、東証REIT指数は一ヶ月通して下落基調であった。
月初は、米国の追加利上げ観測が後退したことや、中国景気に対する不安が和らぎ、TOPIXが上昇。これを受け東証REIT指数も上昇し、5日は1,918.34ポイントと前月に付けた年初来高値を一段上回った。しかし中旬に掛けてTOPIXが大幅上昇となるも、米長期金利の先高感や日銀のマイナス金利の早期解除の見方が強まり、東証REIT指数は下落基調に転じた。28日は9月期決算銘柄の権利落ちの影響もあり、1,840.05ポイントと5月以来4ヶ月ぶり安値となった。月間ベースで見ると、6月以来3ヶ月ぶりの下落。
例年9月は中間決算を控え機関投資家のリバランス売りの影響から、投資口市況が軟調となる傾向がある。
東証が発表する投資部門別売買動向によれば、9月は外国人投資家、証券会社（自己取引部門）が買越しとなる一方、金融機関や投資信託の国内機関投資家が売越しとなった。

個別銘柄の投資口価格は、全60銘柄うち、17銘柄が上昇、42銘柄が下落、1銘柄が変わらず。
ジャパン・ホテル・リート投資法人、星野リゾート・リート投資法人、インヴィンシブル投資法人等のホテル系銘柄が上昇を牽引した。また日本リート投資法人、Oneリート投資法人、エスコンジャパンリート投資法人等、分配金利回りが高く割安感のある銘柄も上昇した。
一方、産業ファンド投資法人、日本ロジスティクスファンド投資法人、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人、三菱地所物流リート投資法人、日本プロロジスリート投資法人等の物流施設銘柄の下落率が大きかった。金利先高感による調整売りに加え、物流業界の2024年問題（ドライバーの長時間労働規制による人手不足の課題）の影響も懸念材料の一つと考えられる。

個別銘柄の動向では、9月はジャパン・ホテル・リート投資法人（JHR）とアドバンス・レジデンス投資法人（ADR）の2銘柄が公募増資を発表した。
JHRは、札幌・京都・福岡の三大都市の宿泊特化型ホテルを取得する。コロナ後初の公募増資で地域分散を図りながら本格的な外部成長に舵を切る。取得額100億円の大型ホテルである「ラ・ジェント・ステイ札幌大通」は変動賃料のみの賃料形態で、収益のアップサイドポテンシャル発揮を狙う。
ADRは、住宅11物件を取得する。うち4物件は社宅や学生寮等のドミトリータイプで、オペレーターを介した賃料保証型となる。一般的に賃貸住宅よりNOI利回りが高い点からポートフォリオの分散及び強化に繋がることが期待できよう。

REIT全体で見ると、前月に引き続きホテルの取引が活発化している。ホテル特化型銘柄だけでなく、総合型銘柄や住宅主体の銘柄もホテルの投資比率を高めており、9月末におけるホテルの資産残高は1兆8,446億円、REIT全体におけるホテルの投資比率は7月末の7.6%から9月末は8.2%と急拡大している。一方、中国人訪日客の回復状況やホテル運営の労働力不足の影響から、ホテルの稼働推移を注視する必要も考えられる。
また住宅の取引も増加傾向にある。住宅は築年数の経過に伴う競争力の低下が顕著である点、また売買マーケットが大きく、1物件当たりの規模が小さいため、他の用途に比べて売却しやすい点から、物件入替えが進んでいる。
一方、物流施設の取引が停滞している。2023年上半期は物流施設銘柄の公募増資が相次ぎ、物流施設の取得が活発であったが、8月以降物流施設銘柄における公募増資がなく、代わってホテル銘柄と住宅銘柄が台頭している。

＜市況データ＞

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2021年10月～2023年9月の24ヶ月間） 




2．個別銘柄データ

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予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する