１．REIT全体市況

4月末の東証REIT指数（配当なし）は、前月比-1.18%の小幅下落。一ヶ月通してTOPIXに近似した推移となった。
月初は欧米の感染者急増や原油価格の下落、更に国内の感染拡大から経済の停滞が長期化するとの見通しから、株式相場とともに下落し、6日は1,419.26ポイントと2週間ぶり安値を付けた。しかし欧米の感染ペースの鈍化や米国の大規模な金融政策を背景に、7日に前日比+121.87ポイントと急反発し1,500ポイントを回復すると、月後半は1,550～1,600ポイントに収斂して安定的に推移した。3月の急落局面が落ち着く一方、コロナウイルスによる業績への影響を見極め難く、REIT独自の価格の方向性が見通しづらい状況にあると言えよう。

個別銘柄の投資口価格を見ると、伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人の前月比+27.22%、CREロジスティクスファンド投資法人の+16.21%を筆頭に、物流施設系銘柄が大幅上昇。コロナ禍におけるEコマース需要を追い風に、3月の急落前の水準に回復した銘柄も存在する。また住宅系銘柄も、コロナウイルスによる影響を受けにくい収益構造である点から安定した推移となっている。
コロナウイルスによる業績への影響を最も受けやすいホテル系銘柄は、3月の下落率が最も高かった反動や分配金利回りの高さから見た割安感が意識され、上昇に転じた。
対照的に、オフィスビル系銘柄や都市型商業施設を保有する銘柄の下落が顕著であった。日本ビルファンド投資法人は前月比-11.19%、野村不動産マスターファンド投資法人は-9.52%、アクティビア・プロパティーズ投資法人が-9.17%と下落率が大きかった。このようにコロナウイルスによる業績への影響を懸念し、用途間の価格差がより明確となっている。
これに伴い分配金利回りの水準も大きく変化している。ホテル系銘柄の分配金利回りが上昇する一方、物流施設や住宅系銘柄の分配金利回りは低下し、コロナ危機前と比べて用途間の相対的評価に変化が生じている。

個別銘柄の動向では、4月1日に日本賃貸住宅投資法人が日本ヘルスケア投資法人と合併し、大和証券リビング投資法人に名称を変更。合併に併せて賃貸住宅27物件を売却する一方、有料老人ホーム28物件を取得。これら物件入替えと合併による承継資産を併せて、資産規模は合併前より33%増の3,028億円となった。住宅を主体とするREITの中では、アドバンス・レジデンス投資法人、日本アコモデーションファンド投資法人に次いで3番目の規模に位置し、住宅系REITとしての存在感が高まる。

3月に引き続き、ホテル系銘柄における業績予想の修正が相次いだ。森トラスト・ホテルリート投資法人は、賃料算出基準月が業績予想の対象月と異なるため、コロナウイルスによる影響を正確に算出できないことから、業績予想を未定とした。
いちごホテルリート投資法人は、4月以降の4ヶ月分の変動賃料が発生しない前提で、60%減益に修正。
インヴィンシブル投資法人は、スポンサーグループのホテル運営会社の経営破綻を回避するために、3月以降の4ヶ月分の固定賃料を全額免除する上、ホテル運営会社が負担する物件管理料を補填する異例の措置となり、98%減益に修正した。
このようにホテル経営が極めて困難な状況が、不動産所有者であるREITにも相当な負担を強いる事態にまで発展した。改めてホテル運営会社の経営体力やスポンサー集中リスクがREITの運営に問われる。

 ＜市況データ＞

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2018年5月～2020年4月の24ヶ月間） 





2．個別銘柄データ

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予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する